墓地
        青空の下に広がる海。
        その近くの木陰で牡丹が紙飛行機を折っている。
        墓地の中。海を見下ろす位置。
        後ろを向くと、ある墓石の前にアヤが立っている。
     アヤ[彩…]
        ベッドで眠る彩、いなくなって十字に切られたベッドを思い出す。
     アヤ[オレは必ず見つけだす。必ず!]


Mission 17 Kritiker  ―名もなき誇りb

夜の街         ガラの悪そうな若者たちが路上にしゃがみ込み、たむろしている。         そこに、頭までマントを被った怪しげな人物が近付いて来た。         何をするでもなく、ただ通り過ぎたようだったが、その直後、若者の1人が吸っていた煙草が         突然口元まで発火した。     若者A「うわぁっちっ!うわぁぁぁっ!」         が、今度は身体中が発火し、あっと言う間に炎に包まれる。         それを見ていた仲間も、突然頭を抱え、次の瞬間には火だるまになっていた。         辺りは騒然として、通行人はワケが分からず立ち尽くし、何もできずそれを見ているだけだ。         夜の街に悲鳴がこだまし、炎は明るい光を放ち、彼らを焼き尽くしていった。
子猫の住む家(店頭)         開店準備をする3人。         店の壁に寄掛るように、巴さくらが立っている。         花を運んでいたオミが彼女に気付く。      オミ「あ…」         ガラスを拭いていたケンが振り向く。      ケン「また来てんのか」      オミ「アヤくん、戻って来ないのかなぁ」         新装開店のポスターを貼っているヨージ。         その隣には、猫を抱いた百恵さんがいる。     ヨージ「あいつは、仕方ないだろ」      ケン「オレ達は成り行きで、ここに戻っちまったけど…」         諦めたのか、帰っていくさくら。         その後ろ姿とすれ違い、バーマンが歩いてくる。         それに気付く3人。
墓地脇の道路(車内)         停めてあった車にアヤが乗り、エンジンをかけようとすると、助手席のドアが開いて牡丹が乗         り込んできた。      アヤ「お前…、何の用だ」         牡丹は黙って、アヤに鍵を見せた。      アヤ「な…それは…」         さくらに預けた貸金庫の鍵だ。         その鍵を見ながら、牡丹が喋りだす。      牡丹「さくらって子に頼まれてね、アヤさんに返して下さいだと。なんだいこりゃ、貸金庫の鍵か?」         アヤに差し出す。      牡丹「あの子、毎日店の前に来てるぞ。こんなもの預けるってことは、それなりの仲なんだろ?え?」         鍵を受け取るアヤ。      アヤ「用件はそれだけか」      牡丹「アヤ、花屋に戻れ。ミッションだ」         視線を外すアヤ。      アヤ「花屋へは戻らない」      牡丹「なんだとっ」         牡丹は思わず身を乗りだした。      アヤ「オレはもう、ヴァイスじゃない」      牡丹「お前…」         目線を牡丹に戻すアヤ。      アヤ「行く所がある。降りてくれ」      牡丹「ドライブか?オレも付き合おう」      アヤ「あんたとデートする趣味はない」         煙草をくわえる牡丹。      牡丹「オレの方はあるんだ」         火を点けようとした牡丹を、アヤが怒鳴った。      アヤ「この車は禁煙だ!」
子猫の住む家(地下)         暗い部屋に指令のビデオが流れる。    ペルシャ「ヴァィスの諸君、新たなるミッションの発令だ」         その声に慌てて身を乗りだす3人。         脇のソファにはバーマンが座っている。    ペルシャ「最近、若者達が突然炎に包まれて死亡する事件が相次いでいる。『これは未来を考える会』の         幹部達による殺人だ。闇の白き狩人達よ、この黒き獣の明日を狩れ!」         ビデオが終り、部屋が明るくなる。      ケン「一体…どういうことだよ」      オミ「ペルシャは…ペルシャは生きてるのっ?」    マンクス「残念ながら、今のはコンピューターで作った偽物のペルシャよ」         その問いに答えたのは、いつの間にか階段を降りてきていたマンクスだ。    マンクス「この方があなた達にはピーンとくると思って」     ヨージ「っんだよ、バカバカしい」      ケン「それで、ターゲットの居場所は」    マンクス「バーマンに聞いてちょうだい。今後は彼女1人に任せるから」         黙ってマンクスを見ているバーマン。      オミ「え…どういうこと?」    マンクス「私はペルシャの秘書。私の役目は終わったの」         哀しげなマンクス。         そこへ、バーマンが入ってくる。    バーマン「ターゲットの居場所については、判明次第連絡します。全員参加でいいわね?」         顔を見合わせる3人。
車内         高速を走るアヤの車。         黙々と運転するアヤ。紙飛行機をいじりながら話し続ける牡丹。      牡丹「『未来を考える会』ってのは、近頃の若者達の退廃を何とかしようと、教師や普通の会社員         なんかが作った勉強会なんだ。それがどういうワケか、この数ヶ月で殺人集団に変わっちまっ         た。なぁアヤ、ごく普通の人達が何でそんなふうになったと思う?」         アヤ無表情なまま淡々と答える。      アヤ「ヴァイスはやめたと言ったろ」         窓から外を見る牡丹。      牡丹「意見を聞いただけだよ、世間話さ。オレは彼らの背後に『エスツェット』がいるんじゃないか         と思ってる。お前の妹の誘拐と同様にな」         アヤの表情が険しくなる。      牡丹「だとすれば、今度のミッションに参加するのは無駄じゃあるまい」      アヤ「お前は、この間もそんなことを言っていたな」      牡丹「まぁな。そりゃ確かに、すぐにお前の妹が見つかるってもんじゃないかもしれん。しかしエス         ツェットがらみの事件、ひとつひとつ当たっていけば、何か手掛かりくらいは得られるんじゃ         ないか?お前1人でやみくもに走り回ってどうなる」      アヤ「よく喋る奴だ」      牡丹「何っ?」      アヤ「オレには、あんたと遊んでいるヒマはない!」      牡丹「はっ!オレからすりゃ、お前の方こそ遊んでるように見えるぜ」      アヤ「オレは!」      牡丹「妹探しで忙しいか。お前1人で何ができる。どうやって見つけだすつもりだ」         海沿いを走る車。彩のいた病院が見えてきた。
病院(廊下)         足早に歩く看護婦を、小走りで追いかけるアヤ。      アヤ「ちょっと、待って」     看護婦「もう、いい加減にして下さい!話すことなんて何もありません。妹さんはあなたが引き取った         んじゃないんですか?」      アヤ「いや…何か変わったことがあるはずだ。何でもいい、思い出してくれ。どんな小さいことでも         いいんだ!頼む!」         看護婦の腕を掴むアヤ。彼女は立ち止まり、アヤを睨みつけた。     看護婦「放して下さい!人呼びますよ!」         去っていく看護婦。立ち尽くすアヤ。      牡丹「なるほどね」         アヤが振り向くと、牡丹がしゃがみ込んで子供と遊んでいた。         紙飛行機を飛ばしてやると、楽しそうにそれを追い掛けて廊下を走っていった。         牡丹は微笑んでそれをみていたが、ゆっくりと立ち上がり、振り向いた。      牡丹「しかし、これがお前の限界だ」         何も言えないアヤ。         その時、清掃婦が牡丹にぶつかってきた。     清掃婦「ああ、すみませんねぇ」      牡丹「ごくろうさん」         去っていく清掃婦。      牡丹「今のおばさんな、オレが先週からここに潜入させているんだ」         黙っているアヤにフロッピーを差し出す。      牡丹「今報告をもらった。見たいか?」         複雑な表情のアヤ。
病院の駐車場(車内)         ノートパソコンにフロッピーを挿入するアヤ。         横から覗き込む牡丹。      牡丹「どうだい、少しはクリティカァの捜査力を見直したろ」      アヤ「少し黙っていてくれ」         画面には何かの名簿のようなもの。         牡丹はアヤの手に上から自分の手を重ねて、勝手にクリックする。      牡丹「岡本信一、看護士、33歳。事件以来落着きがない。見ろよ、キャバクラ嬢と不倫関係だと。         羨ましいねぇ。オレが誘拐犯なら、まずこういう奴を買収するなぁ」         その言葉にハッとするアヤ。
子猫の住む家(店頭)         百恵さんが店の前をほうきで掃いている。もちろん猫も一緒だ。         3人の姿はない。
子猫の住む家(居間)         パソコンのモニターには事件のときの写真が映っている。         パソコンの前にオミ、後ろからケンが来てモニターを覗く。      ケン「どうだ」      オミ「監視カメラにたまたま写ってただけだからね。画質もイマイチだし…」     ヨージ「こいつを見てみようぜ」         離れて座っていたヨージの声に、2人が振り返ると、彼はビデオテープを手にしていた。           ビデオにはいろいろな場所で起きた、その事件を映し出していた。         (パソコンのモニターで見ているらしく、右にケン左にヨージ。オミは座ったまま)      ケン「あ、燃えた」      オミ「こんなビデオどこで手に入れたの?」         オミがヨージを見上げる。     ヨージ「ある裏のルートから。とだけ言っておこう」      ケン「あやしいビデオはヨージに任せろ、か」     ヨージ「ああ、ストップ」         突然画面を指さすヨージ。     ヨージ「こいつ、なんかヘンじゃねぇの?」         もう一度画面を巻き戻す。      オミ「待って、どっちの映像にも…」         三分割した画面の全てに映っている女がいた。         オミは画面を切り替え、サーモグラフィーを見る。         女の手が、異常に高い温度を示している。そこから何かが出ているのも分かる。     ヨージ「ガソリン…か?」      オミ「いや、もっとはるかに燃焼効率のいいものだよ。吹き付けられた途端気化して、静電気程度で         も発火するんじゃないのかなぁ」      ケン「特殊な化学燃料か…」     ヨージ「よし、そっちの線から追ってみようぜ。まず、燃料の特定だ。頼むぜ、オミ」         ヨージ、オミの頭をぐしゃっとする。      オミ「うん…」      ケン「どうした?」      オミ「いや、僕達3人でやってくしか、ないのかなって」     ヨージ「…奴がいれば『放っとけばいい』って言うとこだけどな」         ケン、オミの肩に手をのせる。      ケン「オレ達はオレ達で、今できることをやっておこうぜ。な」      オミ「うん」         ヨージもオミの肩を叩く。
マンションの前(車内)         夜。降り頻る雨の中、アヤはマンションから出てくる人物を待っていた。         助手席から紙飛行機が飛んで来て、目の前に落ちる。      牡丹「すまん」      アヤ「なんなんだ、それはっ」      牡丹「あずみの奴が好きでね」      アヤ「あずみ?」      牡丹「娘さ、オレの」         牡丹は、紙飛行機を目の前のフロントガラスに飛ばし、戻ってきたそれを口でキャッチした。         フン、と鼻で笑うアヤ。         短い沈黙。マンションからはまだ出てくる気配がない。      牡丹「キャバクラ嬢と不倫か。お前、キャバクラ行ったことあるか?」         無視するアヤ。      牡丹「つまんねぇ。…あ、そうか!いやーあのさくらって子さ、今気付いたんだがお前の妹にそっく         りだな」         ようやく反応して、牡丹を見るアヤ。      牡丹「成程ね、そういうことか。しかし妹の代わりじゃ、ちょっと可哀相だぜ」      アヤ「あんたには関係ないだろ」      牡丹「放っとけないんだよ、お前のことが」      アヤ「何故だ。ヴァイスに戻したいからか!」      牡丹「お前が好きだからさ。他人とは思えないんだな」      アヤ「ふざけるな!オレを怒らせたいか!」      牡丹「ああ、怒らせたいね!怒らせて、そのクールな上っ面を剥ぎ取ってやりたいよ!お前本当に妹         さえ無事ならそれでいいのか?不幸な目にあってるのは、妹1人じゃないんだぞ?放っとけば         あのさくらって子だって、どんな被害を受けるか分かったもんじゃない。今度の事件だって…」      アヤ「…黙れ」      牡丹「何っ?」      アヤ「出てきた」

アイキャッチ:なし CM アイキャッチ:アヤ

マンションの前
        周りを気にしながら、マンションを出てくる男。岡本信一。         傘をさし踏み出そうとした瞬間、正面から拳が飛んできて、彼は雨のコンクリートに倒れた。         殴ったのはもちろんアヤだ。         牡丹は車の中で紙飛行機をいじっている。         アヤが馬乗りになり、ネクタイを掴んだままもう一度拳を振り上げると、男が言った。      岡本「まっ…待て、言うよ、言うよぉ。バーで妙な女に大金を貰って…それで非常口の鍵をあけてお         いたんだ。後で見に行ったらベッドが十字に切り裂かれていて、あの子はいなかった。オレ、         怖くなってよぉ」      アヤ「妙な女とは!」      岡本「ずっと、サングラスをかけていた。暗かったし、顔はよく…」      アヤ「それで!」      岡本「それでって…」      アヤ「彩は!妹は何処にいる!」      岡本「知らないよ。オレは…」      アヤ「お前が手引きしたんだろっ」      岡本「知らねぇって…そんなに知りてぇなら、なんでとっとと警察に届けないんだ?」         ビクッとするアヤ。それを見て強気に出る男。      岡本「そうじゃねぇか。警察にいけよな警察に。隠してるってことは、何か後ろめたいことでもある         んじゃないのか?」         唇を噛み、拳を震わせているアヤ。男は尚も続ける。      岡本「へっ、警察の死体置場にでも行けば、見つかるかもしれないぜ」         ついにアヤが拳を振り降ろした。男は再び地面に叩きつけられる。         アヤは何度か殴ると、ネクタイを吊上げ、首を絞めた。         ギリギリと締め上げ、男が最期の声を上げたかと思った瞬間、背中から牡丹が現れ、アヤを引         き剥がした。      牡丹「それくらいにしておけ!死んじまうぞ!」         よつんばいになり、慌てて逃げようとする男。アヤが追おうとする。      牡丹「頭を冷やせ!あんな奴、殺してどうする!」         男は息も絶え絶えに、あわあわしながら逃げて行く。         それでもなお、追おうとするアヤ。      牡丹「いい加減にしろっ!」         そう言って、アヤのミゾオチに牡丹の拳が入った。      アヤ「あんたのせいで、逃げちまったじゃないか!」         アヤも殴り返し、2人はしばらく雨の中で殴り合う。      牡丹「ふざけんな!お前、仮にもヴァイスだろっ。カッとなって殺すんじゃ、ただのチンピラだ!」      アヤ「オレはもうヴァイスじゃない!何度言ったら分かる!」      牡丹「何度でも言ってやる!お前はヴァイスだ!」      アヤ「うるさい!あんたなんかにオレの気持ちが解ってたまるか!とっとと家に帰って、娘と紙飛行         機でも折ってればいいんだ!」      牡丹「っ…このガキ!」         ひときわ強いパンチが入り、アヤは地面に倒れた。      牡丹「お前に、お前に何が解る!」         牡丹はまるでさっきのアヤのように、馬乗りになり何度も頬を殴りつける。      牡丹「自分だけ…自分だけ不幸なつもりか!」         アヤ胸倉を掴み、半身を起こす。      牡丹「お前1人の力なんてな、こんなもんだっ。分かったか!」         そういってもう一度殴った。         アヤは荒い呼吸をしている。牡丹は立ち上がりその場を去ろうとしたが、よろめいて膝をつい         てしまう。         アヤが気付き、上半身を起こして声をかける。      アヤ「どうした」      牡丹「うるさい!古傷が痛んだだけだ。お前のパンチが効いたわけじゃない!」         小さく笑うアヤ。         立ち上がった牡丹から、写真が1枚落ちた。         アヤがそれを拾う。         紙飛行機を手に笑う少女の写真。         それを手にしたまま立ち上がるアヤ、そこへ牡丹がバランスを崩して寄掛ってくる。      牡丹「お、オレに寄掛るなっ」      アヤ「寄掛ってんのはあんただろ」         肩で押し戻すアヤ。が、よろけてしまう。      牡丹「みろ、やっぱりお前だ」      アヤ「あんたの方だろっ」      牡丹「お前だって言ってるだろ」      アヤ「うるさい!黙れっ。真っ直ぐ歩けよ」         2人は言い合いながらも、支え合うように車へと戻っていく。
車内         アヤは前を向いたまま、拾った写真を牡丹に渡す。         受け取り、その少女の写真を見つめる牡丹。      牡丹「あずみ…」      アヤ「オレなんかにくっついてないで、早く帰ってやったらどうだ」      牡丹「帰る家はないよ。妻は殺された。あずみは、さらわれたまま行方不明だ。もう三年も前の事だ」      アヤ「娘さんの、手掛かりはないのか」      牡丹「おそらく、もう生きちゃいないだろう…いや!きっと生きている。そう信じたい!だからオレ         はクリティカァになった。この仕事をしていれば、いつか娘の手掛かりにぶつかることがある         かもしれない、そう思ってな」         そのとき、運転席の前にある液晶画面に、オミからの通信が入った。      オミ「アヤくん、そこにいる?ミッションのことは牡丹さんから聞いているよね。ターゲットの居場         所が解ったんだ」         顔を見合わせる2人。
子猫の住む家(居間)         パソコンの前に立っている3人。すでにスタンバイは済んでいる。      オミ「放火殺人に使われていた特殊な燃料を割り出して、その販売ルートを追ってみたんだよ。もし、         アヤくんが来られるんなら、ね?」
車内      オミ「とにかく、地図を送るね」         画面に地図が転送される。         無言の2人。
ターゲットのアジト         どこかの工場の一画。         建物の前にはタンクローリーが停まっている。         その建物の2階に、ひとつだけ明かりのついている窓がある。           中では、パソコンを中央に、4人の男と1人の女がなにやら話し合っている。         パソコンのモニターには、両手を組んだ何者かの(シュルディッヒ)胸部のみが映っている。       女「みなさん、若者達の問題は、ますます深刻化しています。もはや、ひとりふたりを浄化の炎で         指導する程度では、解決できないのではないでしょうか」     シュル「その通りだ。若い連中をこのままにしていては、この国は駄目になってしまう」      警官「そうだ!」     自衛官「そうだ」    眼鏡の男「そうですな」    太った男「その通りだ」         頷く女。         ホワイトボードに貼られた首都圏の地図を指しながら、自衛官が説明を始める。     自衛官「これらは、若い連中が多数集まる繁華街である。これより準備にかかり、街ごと焼き尽くす」
シュヴァルツの部屋         パソコンの画面には、自衛官が説明をしている様子が映っている。     自衛官「東京全体を浄化するのだ」         電源が切られる。         パソコンの前に座っているのはシュルディッヒ。彼を囲むように3人が立っている。  クロフォード「たいしたものだな。5人を操り、5千人、5万人を焼き尽くす」 シュルディッヒ「操ってるワケじゃない。ほんのちょっと助言をしてるだけで」  クロフォード「誰もが皆、狂気と紙一重の世界に生きているというワケか」 ファルファレロ「誰もが悪魔を飼っている」      那岐「こんなことで、本当に新しい世界が造れるの?」         呟く那岐。座ったまま彼を振り返るシュルディッヒ。 シュルディッヒ「さあな。でも、あいつらはそう信じてる」  クロフォード「目的などどうでもいい。我々に必要なのはプロセスだ」
ターゲットのアジト         2階の明かりが消えた。         そこへアヤの車が到着する。      牡丹「ここか…」         アヤも助手席の方に乗りだして外を見る。         と、出入口のドアが開いて、さっきの5人が外へ出てきた。      牡丹「いかん、奴等移動するぞ」         車を降りようとする牡丹。      アヤ「何をする気だ!」      牡丹「ケン達が到着するまで引き止めるんだ」      アヤ「どうやって!」      牡丹「お前も来るか?」         何も答えず顔を背けるアヤ。      牡丹「あくまで、ミッションに参加しないつもりか」      アヤ「オレは…」         黙り込んでしまうアヤ。      牡丹「いいかアヤ、もう一発お前を殴りたいが時間がない。これだけは言っておく。お前とオレは似         たような立場だが、オレは自分の娘さえ見つかればそれでいいなんて思っちゃいない。隣の赤         ん坊も、近所のガキどもも心配だ。この仕事は、オレの使命なんだ」         車を降りて行ってしまう牡丹。         無言のアヤ。         牡丹はタンクローリーの下に潜り込み、タイヤにナイフで穴を開けた。         が、最後に出てきた警官が、牡丹に気付いてしまった。同時に拳銃を構える。      警官「誰だ!」         発砲する警官、逃げる牡丹。         銃声にハッとするアヤ。      アヤ[牡丹…]         牡丹の声が脳裏に蘇る。         [お前本当に、妹さえ無事ならそれでいいのか?]         [この仕事はオレの使命なんだ]         助手席に残された、少女の写真を見つめるアヤ。         ぎゅっと目を閉じる、微かに震える瞼。         そして、決意したように目を見開いた。         車を降り、側に転がっていた鉄の棒を拾うと、牡丹の方へ向かう。      牡丹「おおっ、アヤ!」         気付いて笑みを見せるが、そのスキに弾が腕を擦った。      牡丹「おっ…!」      アヤ「牡丹!」         その声に警官が気付き、銃口がアヤに向いた。しかし一瞬早く、牡丹の紙飛行機が警官の前に         飛び、邪魔をした。その間にアヤが走り、警官を強打する。         アヤの着地した目の前に、今度は女が現れた。手にしている砲身はホースのヘッドのようだ。       女「誰っ!」         女が発射した緑の液体は、アヤが除けたため、よろけていた警官の背中に命中した。         警官の体はあっと言う間に発火し、悲鳴をあげ、燃え始めた。         膝をついていた牡丹の所へ、アヤが歩み寄る。      牡丹「アヤ!やっとやる気になってくれたか」      アヤ「冗談じゃない!あんた無茶苦茶だ!」         そう言っている間に、機関銃が発砲された。         アヤは急いでかわしたが、除けきれずに膝に弾を食らってしまった。         その場に崩れるアヤ。         自衛官はニヤリと笑い、再び引き金を引いた。      牡丹「アヤ!」         咄嗟にアヤの前に立ち塞がる牡丹。         機関銃が牡丹を的に乱射される。、てしまう。      アヤ「牡丹!」         ようやく弾が無くなり、銃声は止んだ。が、無数の弾を一身に受けた牡丹の体は、もうボロボ         ロだった。それでも、最後の微笑みをアヤの向ける。      アヤ「牡丹…」         そして追い打ちを掛けるように、さっきの女が牡丹に緑の燃料を吹き付けた。         牡丹の脳裏に、娘が無邪気に走る姿が浮かんだ。      牡丹「あずみ…」         体が発火する。      アヤ「牡丹!!」         牡丹はみるみる炎に包まれ、崩れ落ちた。      アヤ「牡丹ーっ!」     自衛官「とどめだっ!」         機関銃を構えた男を、ワイヤーが捕えた。ヨージだ。      オミ「アヤくんっ!」         オミは武器と服をアヤに放った。         キャッチするアヤ。           ヨージの背後を狙って、眼鏡の男が何か振り上げて走ってきた。         が、その手前で現れたケンのバグナグに倒れる。         ワイヤーを解こうとしていた男は、背中からアヤに切りつけられ、倒れた。                  オミのダーツが飛ぶ。男の手の甲に命中し、男が手に持っていたガラスのコップは地面に落ち         て、中の燃料が男の体を炎で包んだ。         女はホースを持ったまま、狂ったように悲鳴をあげながら、そこら中に燃料を撒いた。         アヤの刀に倒れるが、手から落ちた砲身の口はタンクに向かって燃料を吹き付る。     ヨージ「アヤ!」      ケン「アヤ!」      オミ「アヤくんっ!」         炎を飛び越え、逃げる4人。         その背後で、タンクは爆発し、全てを焼き尽くした。
墓地         海を見下ろす丘で、木陰でに立つアヤ。      アヤ[牡丹…]         手にした紙飛行機を見つめている。      アヤ[オレは使命なんて信じない。でも、あんたのことは…]         アヤは、手にしていた紙飛行機を海に向かって飛ばした。         青い空を背に風に乗り、ゆっくりと飛んでいく。      アヤ[あんたのことは…信じる]