街中
       夏の熱い陽射しの中、イヤホンを耳に歩く少女。耳に流れ込む音楽。どこにでもある風景。
       が、突然頬に涙が伝ったかと思うと、少女は叫び声をあげて発狂し、その場にしゃがみ込ん
       だ。驚く周囲。

少年の部屋        ベッドに寝転び、ラジカセでCDを聞いている少年。        昼間の少女が聴いていたのと同じ曲だ。        傍らにはCDケース。ジャケットにはブンダーXとある。        廊下から部屋のドアをノックする母親。      母「リョウちゃん、ボリュームを下げなさい」        聞こえていないのか、反応しない少年。     少年「…う…うわぁぁぁぁっっ!」        少年は急に叫び声をあげて起き上がった。        母親が慌ててドアを開ける。      母「どうしたのっ、リョウちゃん?!」        カーテンが夜風に靡く。(4階か5階の部屋)        窓の下には、地面に叩きつけられた少年と、周りを囲むやじ馬の姿があった。


Mission 19 Sehen ―狂想の序曲b


コンサート会場(外)        ドームのような会場。外には長い列ができている。        その少し前の方に、花屋の車が止まった。
コンサート会場(中)        会場内の地下通路を歩いて行く、オミとアヤ。        オミは花篭を抱え、アヤは花を乗せた台車を押している。     オミ「ったく、複雑な通路だね」     アヤ「劇場の地下通路なんて、どこもこんなもんさ」     オミ「こんなところで火事になったら、迷子になって焼け死んじゃうね」        そう言っていると、目の前に防火シャッターのスイッチがあった。        スイッチの前を通り過ぎ、その先のエレベーターに乗る2人。          ホールでは設営スタッフが慌ただしそうに動いている。        しゃがみ込んで作業をしている少女の背中に、オミが声を掛けた。     オミ「あのーすいません、お祝いの花を届けに来たんですけど」        振り向いた少女は、さくらだった。驚く3人。     オミ「さくらさん!」    さくら「オミさんっ。アヤさんも…」        立ち上がり、涙ぐむさくら。     オミ「どうしてここに?」    さくら「親戚の人が、このドーム会場の責任者をしてるんです。それで時々アルバイトをさせても        らっていて」     オミ「へぇ、そうなんだ」        ぼーっとしているさくらに、耳打ちするオミ。     オミ「さくらさん、良かったじゃない」    さくら「ええっ?!」        赤くなるさくら。        気を利かせて離れるオミ。     オミ「すいませーん、これ、どこに飾ったら良いでしょうかぁ」        そんなオミを見て、腕組みするアヤ。    さくら「あのー…」        遠慮がちに声を掛けるさくら。ようやく彼女に視線を移すアヤ。    さくら「その後、彼女の具合いかがですか?」        アヤの表情が変わり、慌てるさくら。    さくら「あ!ごめんなさいっっ!私ったら…」     アヤ「いや…」    さくら「アヤさん。何度かアヤさんに会いに行きました。でも、アヤさんいつもいなくて」     アヤ「避けていたワケじゃない」    さくら「分かってますっ。一度いろいろ話したいと思って…今度会ってもらえますか?」     アヤ「…難しいな」    さくら「え…っ」     アヤ「忙しいんだ」    さくら「ほんの少しでいいんですけど…」        黙っているアヤ。遠くから、スタッフの声が届く。  男(声のみ)「さくらっ、何してんだよ。ちょっと手伝ってくれよ」    さくら「すいません、今行きます!」        振り返って答えるさくら。    さくら「今度、また」        さくら、アヤのペコッと頭を下げてから、去っていく。        その後ろ姿を見つめるアヤ。
場所不明        暗い部屋で1人、パソコンに向かいキーボードを叩いている男、河次。        モニターには次々と音符が打ち出されていく。        その背後から、もう1人男が現れた。クロフォードである。 クロフォード「河次さん。例の曲、効果は絶大でしたね。多くの人間が錯乱状態に陥りました」        振り向こうとはしないが、一瞬、手を止める河次。     河次「あの曲はまだ未完成だ。私の期待に反し、陶酔した者が半分もいなかった」        眉をひそめるクロフォード。     河次「次のこの曲で、全ての人間を陶酔させてみせる…フフフッ」 クロフォード「さすが完璧主義の河次さん。実験は成功します。間違いありません」        そこで、河次が急に声を荒げた。     河次「これは実験ではないっ!サウンドアートだ!」 クロフォード「失礼」        眼鏡を直しながら、ニヤリと笑う口元。          部屋の外に出て呟くクロフォード。 クロフォード「食えん奴。ふっ…しかし、利用価値はある」
ハンバーガーショップ    ヨージ「んー、それはちょっと冷たすぎるな」     オミ「ヨージくんもそう思うでしょ?」        ジュースを飲みながら向かい合って座っているのは、オミとヨージ。     オミ「さくらさんはアヤくんが好きなんだ。それを薄々感じているのに、アヤくんは…」    ヨージ「仕方ないっちゃ、仕方ないか。あいつの心の中は今、行方不明になった彩ちゃんの事で        いっぱいだからな」     オミ「それは分かるけど…さくらさんの気持ちを考えると、何だか可哀相になっちゃって」    ヨージ「オミ。お前は人の心配する前にだな、自分の恋の相手を探す方が先だろう!」        後ろの女子高生3人を振り返るヨージ。    ヨージ「あの女の子なんかどうだ」        楽しそうに話している3人。その中のCDを聴いていた真ん中の少女が、手にしていた        ジュースを落としたかと思うと、突然呻き声を出し始めた。     少女「ユミどうしたのっ?ねぇ、ユミっ」        彼女は店を飛び出し、そのまま目の前の車道に出た。        地面に落ちるディスクマン。中からCDが飛び出す。        少女は車に跳ねられ、動かなくなった。
子猫の住む家(店内)        猫を抱いて、居眠りをしていね百恵さん。    ヨージ「おっどろいたよなぁ。いきなり叫びだして、車道に飛び出すなんてよ」        エプロンを付けながら呟くヨージ。     オミ「うん」        強く頷くオミ。        話を聴いているアヤとケン。        テーブルの所へ来て、イスに腰掛けるヨージ。    ヨージ「ったく、今どきの若い女は何を考えてんだか」     ケン「へーえ。お前に女の気持ちが解らないのか」        茶化すように言うケンと、妙に力を入れて答えるヨージ。        アヤは黙々と、ショーケースのガラスを拭いている。    ヨージ「何度も言うようだが、女子高生はオレの守備範囲じゃないんでねっ」        その直後、店のドアが開いて、さくらが現れた。    さくら「こんにちは」    ヨージ「いらっしゃい」     オミ「さくらさん!」        無言のアヤ。再びガラスを拭き始める。    さくら「あのー、アヤさんに…」     ケン「おいアヤ、お前に話があるってさ」    ヨージ「今、店はヒマなんだ。話を聞いてやれよ」        アヤはガラスを拭く手を止めると、無言のままさくら前を過ぎ、立ち止まった。     アヤ「近くに静かな店がある。そこで、いいかな」    さくら「は、はいっ!」
喫茶店        窓際に向かい合って座る2人。        外を見ているアヤと、俯きがちなさくら。    さくら「どうしてアヤさんはあの子…彩ちゃんと名前が同じなんですか?ただの偶然なんですか?        彩ちゃんて、アヤさんの何なんですか?」     アヤ「…彩は、妹だ」    さくら「妹さん、ですか…」        短い沈黙。顔を上げるさくら。 さくら「私、もしも彩ちゃんがアヤさんの恋人なら、アヤさんのこと諦めようと思っていました。        でもそうでないのなら、思い切って私の気持ちを話そうと思って、今日は来ました。私、        アヤさんが…好きです!」        驚いた表情でさくらを見つめるアヤ。    さくら「いつでも、どんなときでも、思うのはアヤさんのことばかりです」     アヤ「…君は、思い違いをしている」    さくら「そんなことを言ってはぐらかさないで下さい!アヤさんは私のことを…」     アヤ「特別な気持ちは無い」    さくら「あの時、金庫の鍵を私に託してくれたのは、彩ちゃんのことを任せてくれたのは…他に託        せる人がいなかった、それだけだったんですか?」        何も答えないアヤ。    さくら「…私、アヤさんのこと解らない。何を考えてるのか、まるで解らない。お花屋さんで仕事        をしているけど、本当は違う」        アヤの表情が変わる。    さくら「アヤさんは、何か特別なことをしようとしている、そこまでは解ってるの。それ以上の事        は何も解らない…。アヤさんは、一体何をしようとしてるんですか?」        やはり無言のアヤ。それを、真っ直ぐに見つめるさくら。    さくら「私に優しくしてくれたのは、私が彼女に似ていた。ただそれだけだったんですね。私は、        彩ちゃんの身代わりでしかな…」     アヤ「勘違いするな。オレは、君のことを何とも思ってはいない。それに…」        席を立ち、さくらに背を向けるアヤ。     アヤ「オレは、人に愛される資格などない男だ」        そう言い残して、店を出て行った。        さくらも立ち上がったが、追わなかった。          店の外に出て、大きく溜息をつくアヤ。        その様子を建物の陰から見ているオミ。
街頭        オレンジ色の空。        ショーウィンドウに映っているのはさくら。その後ろから声を掛けたのはオミだ。     オミ「さくらさん…」        彼女は振り向きもせず、俯いたまま言った。    さくら「アヤさん…オレは人に愛される資格などない男だ、って」     オミ「えっ…!」        驚くオミ。    さくら「本当は私のことなんか、何とも思っていなかったんです…」        涙を堪えるさくらに、何もしてやれず複雑な表情のオミ。

アイキャッチ:なし CM アイキャッチ:ケン

子猫の住む家(店内)        カウンターで何やら作業している、ヨージの後ろ姿。 オミ(声のみ)「さくらさん、この頃顔出さなくなったね」 ケン(声のみ)「ん…あの時以来か」    ヨージ「そーゆーこと」        店の外に目をやるヨージ。        そとではアヤが配達用のバイクに花を積んでいる。    ヨージ「アヤが冷たくしたからさ」     ケン「仕方ないさ。アヤの気持ち、解る気がする」        外を見たまま答えるヨージ。隣にオミ。    ヨージ「そうだったな…」        バイクに乗り、配達に出るアヤ。        見つめる3人。テレビからはニュースが流れている。 アナウンサー「正午のニュースをお知らせします。今朝9時過ぎ頃、葛飾区の河川敷グラウンドで、若い        男が突然暴れだしました」        テレビの前に立つオミ。        画面にはバットを振り回す男と、逃げる少年達の映像が映し出されている。 アナウンサー「この男は、野球をしていた少年達のバットを奪い、周りの人々に襲いかかりました」        テレビに食い入る3人。 アナウンサー「幸い、ケガ人はでませんでしたが、男は意味不明の事を叫びながら、川に飛び込んだとい        うことです。これら若者達の不可解な行動は、この一週間で百件近くも起こっています」    ヨージ「何なんだこれは」     ケン「こう頻繁にキレる奴が現れるかぁ?」        ハンバーガーショップで見た少女を思い出し、何か思いついた表情のオミ。
校庭        青い空に向かって立つ支柱と、それにかかっているバー。        遠くから、次第に助走の足音が近付いてくる。        そしてマットに落ちる、ドサッという音。高飛びの練習のようだ。        マットに落ちたまま、空を見上げているのはさくら。    コーチ「おい、さくらどうした。しっかり飛べっ」        空に伸びる支柱。そこに、さっきのバーはない。飛べなかったのだ。        その様子を、外からフェンス越しに見ている人影。        配達中のアヤである。
子猫の住む家(地下)        テーブルに何か広げ、ゴソゴソと調べものをしているオミ。        誰かが階段を下りてくる。     ケン「そんなもん広げて、何やってんだぁ?」     オミ「これを見て!」        降りてきたのはヨージとケンだ。     オミ「街の中で、突然異常な行動をとりだした人達の共通点を見つけたんだ」    ヨージ「あ?」     ケン「え?」        2人に紙を見せるオミ。覗き込むヨージとケン。        オミの横のソファには、アヤが座っている。     オミ「ほら、みんな何らかの音楽を聴いている時に、錯乱状態になってる」    ヨージ「音楽?」        紙を手に取るケン。     ケン「ホントだな」    ヨージ「偶然じゃないのか?」     オミ「でもヨージくんっ、あのハンバーガーショップの時も!」        その時のことを思い出そうとするヨージ。        頭を抱える少女、その傍らに落ち、フタの開いたディスクマンの中のCD。    ヨージ「確か、白地に黒い字でXって書いてあったような…」        新聞記事を囲む3人。     ケン「一体、どんな音楽を聴いたっていうんだ?」     オミ「調べてみる必要アリだね、あのCD」
マンション(玄関)        飛び降りた少年の家を訪ねる3人。     母親「あなた方は?」     ケン「良一くんの友達です。友達みんなで良一くんを偲ぶ会をやりたいと思いまして、生前彼が        聴いていた音楽を会場に流そうって」
マンション(エレベーター)    ヨージ「友達だったなんて、ウソ言っていいのかなぁ」        ケンの手には問題のCD。     ケン「そりゃ悪いと思ってるさ。でもこれで、異常な行動をとった原因が解れば、彼に対しても        いい供養になるんだ」
子猫の住む家(地下)        パソコンのトレーにCDを入れる。        イスにオミ、両脇にケンとヨージ。少し離れた後方に、CDジャケットを見ているアヤ。     アヤ「魂を揺さぶるブンダーX。○○音楽出版…流行りのテクノ系か」                   (↑すいません、はっきり聞き取れませんでした(泣))        音楽が流れ始める。じっと聴き入る4人。        オミがモニターを指さす。     オミ「見て!断続的に異常な波形を描いてる!」        ケンとヨージの表情が、次第に険しくなっていく。        そして、頭を抱えると、ほぼ同時に叫び声を上げた。     オミ「ケンくん?」        急いで音を止めるオミ。          ソファで、意識のないまま座っているケン。 オミ(声のみ)「やっぱりそうか…」        向かいのソファには、やはり意識の無いヨージが横たわっている。 アヤ(声のみ)「どういうことなんだ」        オミはパソコンの前に座ったまま。アヤはその隣に立っている。     オミ「これは、人間の脳を錯乱させるよう仕組まれてる!」     アヤ「何だって?!」        キーボードを叩く音が響く。        モニターには脳の断面図が表示される。     オミ「この曲を聴くと前頭葉が刺激されて、自律神経系統が侵されて、それで錯乱状態に陥る」     アヤ「最近の事件は全て、この曲を聴いたのが原因か」     オミ「間違いないね。ケンくんとヨージくんも…」     アヤ「だったら何故、オレ達は…」     オミ「刺激に対して、脳の反応がたまたま弱かった…と言うしかないね」     アヤ「それだけの違いでか」     オミ「この音楽を聴いた人が、全員錯乱したワケじゃない。でも、いずれにしろ、これは危険な        音楽だよ」     アヤ「ケンとヨージはどうなる?」     オミ「すぐに気付いて止めたからね、おそらく大丈夫。しばらくすれば、元に戻ると思うよ」        ホッと安心の表情で溜息をつくアヤ。
場所不明        真っ暗な部屋、見えるのはモニターの明かりだけ。        パソコンに向かい、曲を作っている河次。     河次「出来た…!」        そう呟き、イスから立つ。     河次「このサウンドで全ての奴等を恍惚へ導いてやる。私の曲に不可能はない!ハハハハハッ」
子猫の住む家(地下)        事件の切り抜きの上に、置かれているCD.    ヨージ「このCD、インディーズで売られてるんだってよ。発売元は架空の会社だ」        テーブルを囲むソファ。正面にヨージ、ケン、オミ。右のソファにアヤ。     オミ「アーティストもね」     ケン「誰が作ったか、早く見つけないと大変なことになるぜ」        そのとき、誰かが階段を降りてきた。   バーマン「その正体が掴めたわ」     ケン「バーマン!」     アヤ「本当なのか?」   バーマン「そのサウンドのことは、クリティカァでも調べていたのよ。一連の事件に関りがあるに違        いないってね。大分難航したけど、やっと辿り着いたわ」          指令のビデオを見る5人。   ペルシャ「ヴァイスの諸君、今回のターゲットはこの男、河次勇雄である。彼は若きころ作曲活動に        励んだが、誰からも受け入れられず、自分の音楽を理解しない人々を憎んだ。彼はやがて        エスツェットの一員になった。そして復讐のため、サウンドで人々の脳を錯乱させようと        考えたのだ。人を獣化させる危険な音楽、危険な男は消し去らねばならぬ。闇の白き狩人        達よ、この黒き獣の明日を狩れ!」        ビデオが終る。   バーマン「全員参加でいいわね?」        すぐに立ち上がった3人に、遅れてケンが腰を上げる。     ケン「オレもいいけどさ、事前に逮捕できないのか?」   バーマン「曲を聴いてた人々が錯乱してたのは偶然だ。そう言って反抗を否定されてしまえば、法で        裁くことはできないわ」        言いながら、ケンに資料を渡す。        ライヴのフライヤーだ。   バーマン「今夜7時から、5万人を集めてライヴコンサートがあるの。河次はここで新曲を発表する。        今度の曲は、聴いた人全ての神経が破壊される恐れがあるわ」     オミ「5万人の聴衆が暴徒と化す!」   バーマン「時間がないの、急いで」
コンサート会場        時計は6時半を指している。        会場には次々さ観客が入ってくる。        陰からその様子を見ている4人。    ヨージ「開演まであと20分」     ケン「ターゲットは楽屋か舞台裏に入っているはずだ。急ごう」     アヤ「河次はエスツェットの一員なんだ。護衛がいるに違いない。油断するな」        頷く3人。          地下通路を急ぐ4人の前に、立ち塞がる者が現れた。     ヘル「ここから先へは行かせないわよ」        シュライエントだ。     ケン「お前達は!」     オミ「シュライエント!」    ヨージ「やっぱ生きてやがったのか」   シェーン「覚えていてくれて光栄だわ」     ケン「どけ!お前らと戦っているヒマはない!」        ケンが踏み出すと、すかさずムチが飛んできた。   シェーン「行かせないと言っているのよっ」        ケンの行く手を阻むシェーン。        ノイは相変わらず無言のまま、ヨージに素手で挑んでいく。       オミ「お前達もエスツェットの手先なのかっ?」    トート「そんなこと、どーだっていいじゃない」        オミがトートのパラソルを躱す。     ケン「開演時刻が迫っている!ターゲットのミッションが先だ!」        頷くヨージとオミ。        アヤも遅れて、ヘルの攻撃を背に走り出した。
調整室        開演が迫り、慌ただしいスタッフ。そこにはさくらの姿もあった。   スタッフ「開演5分前だ!ブンダーXスタンバイОKか、確認を頼む!」    さくら「はいっ!」        急いで調整室を出るさくら。
地下通路        ターゲットのもとへ急ぐヴァイスと、それを追うシュライエント。        走りながら、オミは壁にあるスイッチに目を止めた。     オミ[これだ!]        ダーツの矢を手に取ると、オミはそのスイッチに向かって投げた。        すると、後ろから走ってきたシュライエントの目の前に、防火シャッターが降りた。        後ろにもシャッターが降りて、彼女達は完全に閉じ込められたかたちとなった。             走り続ける4人。        ふと、アヤが何かを気にしてか、立ち止まった。     ケン「時間がないぞ!」    ヨージ「手分けしてターゲットを!」        4人が散って、誰もいなくなった廊下。        その脇のドアから、そっとさくらが出てくる。
舞台裏        シンセの前に立つ河次。        そこにだけ、ピンスポットがあたっている。     河次「誰かが私を?フッ、新しい芸術のコンサート前に…試してみるか」        おもむろに、手を伸ばす河次。        そして、音楽が流れ始めた。               ステージ裏にいたスタッフ達は、頭を抱えるようにして、一斉に呻き声を上げ、苦しみ        だした。          陶酔したように演奏を続ける河次。        そのスポットのなかに、誰かの足が踏み込んだ。        気付いて、演奏の手を止める。     河次「誰だ!」     アヤ「悪魔でも死神でもない、ただの人殺しさ」     河次「…私の曲に陶酔するがいい!」        再び音楽が流れるが、アヤは何の反応も示さない。        それどころか刀を抜くと、河次の首筋にぴったりと当てた。     河次「ぐっ…う…私のサウンドを聴いて、何故…平気でいられる…っ…」     アヤ「お前と同じように、オレもこれをつけている」        耳には何か特殊なイヤホンが着けられている。     アヤ「悪魔の曲も聞こえなければ…意味はないっ」        逆刃のまま首を吊上げる。     河次「うわぁぁぁっっ!」     アヤ「狂おしく、死ね」        刃を立て、一気に切るアヤ。河次は、声もなく息絶えた。        だが、刀を降ろし顔を上げたアヤは、そのままそこに凍りついた。        視線の先にさくらがいたのだ。        目を離せず、何も言えず、ただじっとしている2人。        会場にはSEが流れ、ステージにはスポットがあたり、観客は歓声を上げた。        開演時間だ。    さくら「…アヤさん」     アヤ「これで、分かったろ。オレは、君の気持ちに応えられる人間じゃないんだ」        去っていくアヤ。     アヤ「オレは…人に愛される資格などない男だ」