大学の校内
       校舎の前にある噴水周辺。
 女子大生A「で、教授が言い寄ってきちゃってさぁ」
 女子大生B「えー?うっそぉ」
       彼女達がその横を通りすぎた直後、一発の銃声が聞こえ、噴水の前にいた男が背中から
       水の中へ落ちた。
       男子生徒がひとり、振り返る。
       通り過ぎた2人の女生徒も振り返り、噴水の周りに人が集まってきた。
       と、再び銃声が響く。
       今度は何発も。そして、噴水に集まってきた人々は次々と撃たれ、崩れ落ちる。
 女子大生A「きゃぁぁぁっっ!!」
       逃惑う人々。
       屋上ではスキンヘッドの男が、猟銃のようなもので次々と発砲している。
       弾が無くなると、今度は小型の拳銃を取りだし、ニヤリと笑った。
       そして、銃口を自分の口内に向けると、その引き金を引いた。

場所不明        テレビで事件が報道されている。 アナウンサー「高橋大学の学生5人を射殺した後自殺した、遠藤政司容疑者は、殺人容疑の裁判で無罪        となり、つい先日釈放されたばかりでした」        テレビが消される。        ワイングラスを持つ手。      男「フッ、バカな奴だ。せっかく無罪にしてやったのに…フッフッフッフ」        ソファに座り新聞を読む男。        逆光で顔は判らない。


Mission 20 Recht ―裁きの矢b


子猫の住む家(店頭)        店の前のテーブルに鉢を並べているケンとヨージ。     ケン「なぁ、この前の女達…」    ヨージ「ん?シュライエントか」        少し離れた壁の前では、アヤがしゃがみ込んでいる。     ケン「どうして生きてたんだろう」    ヨージ「さあな」     ケン「なぁ、どう思う?」        アヤに振るケン。だが、アヤは気付かないのか、じょうろから出る水を見つめている。     ケン「おい、アヤ!」    ヨージ「なーんだ、やっぱりさくらちゃんの事が気になってんのか」        じょうろの水が止まる。        アヤが小さな声で呟く。     アヤ「あの子はもう、ここへは来ない」        何だか分からず、顔を見合わせるヨージとケン。
学校(校門周辺)        バイクにエンジンをかけているのはオミ。        そこへ、女の子が走ってくる。      緑「あーっ!待って待ってーっ」     オミ「え?」        オミが彼女に気付いたのと同時に、彼女はもうオミの後ろに乗っていた。     オミ「あ、あっ!何っ?」      緑「裁判所、裁判所へ行ってっ」     オミ「えぇ?」      緑「早く早くっ、遅れちゃうよ」
路上        少女を乗せて走るオミのバイク。      緑「私、緑。1年A組葉月緑です」     オミ「で?裁判所なんかに、何の用なの?」      緑「パパが待ってるの」     オミ「パパ?」      緑「そ、刑事なんだっ」
裁判所(外)        ゴキゲンな表情で歩いてくる父、剛。      剛「おお、みどりっ…ん?」      緑「パパっ」        バイクから降りる緑。      剛「緑、その子は」      緑「こちら、月夜野先輩。遅れそうだから、送ってもらったの」     オミ「どうも」      剛「ふははははっ!そうかそうか」        剛は笑顔でオミに歩み寄ると、オミの首に腕を回し、絞めんばかりの勢いで顔を近づけ        てきた。      剛「おい、お前!緑のボーイフレンドかっ?」     オミ「いっ…いいえ…っ…!」        苦しそうに答えるオミ。      剛「お前悪党じゃねぇだろうな。悪党だったら、緑に指一本触れさせねぇぞ」     オミ「ぼ、ぼくは…っ」    みどり「ちょっと、パパったら何やってんのよ。お酒飲んでるの?」        ようやくオミを放し、豪快に笑う剛。      剛「はははははっ!いくらパパでも裁判所に酔っ払っては来ないぞっ」        そして、時計を見ると、急に真顔に戻る。      剛「お、いかん。開廷だ。おい、お前も早くそいつを駐車場に置いてこい」     オミ「え?あ、あああのっ、僕は…」      緑「いいじゃない。今日の被告人はパパが捕まえたのよ」     オミ「え?」      剛「ははははははっ」        得意げに中に入っていく剛。歩き方も豪快だ。
一号法廷        傍聴席出入口和側の最前列に座っている3人。      剛「するとあいつ、噛みつきやがったんだ。見ろ、そんときの傷がまだ…ん?」        弁護人席に座っている男に目をやる剛。      剛「あいつは…」         言いかけたときドアが開き、被告人が入ってきた。      緑「あれが、被告人?」      剛「ああ。野郎、通り魔でな。若い女ばかり6人も殺しやがった。目撃者もいるし、凶器の        ゴルフクラブには指紋がついてる。有罪は間違いないはずだ」        おとなしく席に着いた被告人だったが、剛に気付き、突然席を離れる。        剛に駆け寄り、胸倉を掴んだ。    被告人「よくもオレを!オレをパクりやがったなぁ!」        睨みあう2人。    被告人「そこにいるのは娘か!」        警備が2人ようやく男を取り押さえにきた。     警備「おい、戻るんだっ」        引きずられるようにしながら、なおも剛の方を向く被告人。    被告人「お前も娘も殺してやる!殺してやるぞ!」      剛「けっ、野郎…」      緑「パパ…」        怯える緑の肩を抱く剛。          車椅子の少女が法廷に入ってくる。    裁判長「弁護人、どうぞ」        弁護人席の男が立ち上がり、俯いている少女の前に立った。    鬼怒川「えー、あなたはここにいる被告人が、あなたを襲った通り魔であると証言されましたね」     証人「は、はい」    鬼怒川「しかしその日は、いわゆる合コンの帰りだった。あなたは多量のアルコールを飲んでいた」     証人「そんなっ、多量ってワケじゃ…」        少女の前を執拗に行き来する弁護人。    鬼怒川「あなたは被告人のことを前から知っていましたね」     証人「いいえ」        少女がそうこたえると、弁護人は突然足を止め、彼女を睨んだ」    鬼怒川「本当ですか?」     証人「あ、あのっ、近所に住んでる事は知っていました。でも、話したことはありません」    鬼怒川「女子寮の人達と、あの人変質者みたいと話していたと」     証人「それは…みなんがそう言うから、私もつい…」    鬼怒川「それで、通り魔事件が相次ぐようになって、あいつなんじゃないかと、思ったワケですか」     証人「いいえ!」        そこで、検察側が立ち上がった。    検察官「異議有り!今のは誘導尋問です」    鬼怒川「フッ…では質問を変えましょう」        改めて彼女の前に立ち、ゆっくりと見下ろす。    鬼怒川「あなたは12歳の時に、変質者にいたずらされかけた事がある」     証人「え…」        異様な空気が法廷に漂い始める。    鬼怒川「そう、このことは誰にも言えず、自分の1人の胸に秘めていた。そしていつの間にかあな        たは、その時の男と被告人とを同一視するようになっていた」        震えだす少女。     証人「…どうして…そんな…」          傍聴人席のオミが、何かに気付く。       オミ[何かヘンだな…]      鬼怒川「つまりあなたは、被害に合う前から被告人のことを通り魔だと思い込んでいた」        彼女は何も言えず、ただ唇を震わせている。    鬼怒川「だから暗闇で見えもしないのに、襲ってきた相手を被告人だと思った」     証人「で…でもっ…私、見たんですっ」    鬼怒川「いや、あなたは勝手な思い込みで、無実の人間を犯人と決めつけている」     証人「私…私…」    鬼怒川「無実の人間を、犯人にするのですか!」        鬼怒川の目が光る。        それを見た少女は、突然苦しそうな表情をし、車椅子から落ちるようにして倒れた。        ざわめく法廷内。        それを横目に、ネクタイを直す鬼怒川。    鬼怒川「ふん…」
裁判所(外)        外はもう夕暮れで、空も濃いオレンジ色をしている。      緑「びっくりしたぁ。急に倒れちゃうんだもん」     オミ「うん、心臓麻痺だって」      剛「違う!あいつだ。あいつがまた、やりやがったんだ」        振り返る2人。後ろから現れる剛。      緑「え?」     オミ「あいつって?」      剛「鬼怒川だ。あの弁護士野郎だよ。鬼怒川が担当した事件では重要な証人が行方不明になっ        たり、自殺したりすることがしょっちゅう起こるんだ。ったく、とんでもねぇ野郎だ」     オミ「まさか、そんな…うわぁっ!」        またしても首を絞められるオミ。      剛「ちくしょう!酒だ酒だ!お前も付き合え、な!」     オミ「あ、あの僕っ、未成年ですから…っ!」
       勢い良くグラスを置く剛。中はもうカラだ。        バーのカウンターに、剛を中央に座る3人。      剛「くそっ、今日の証人は唯一の目撃者だったんだ」        ボトルを掴み、グラスに注ぐ剛。酒がグラスから溢れている。      緑「ああ、もうパパったら」      剛「ええい、聞けっ!」        慌てて拭く緑の手を押し除ける剛。      剛「あの子は、後遺症で苦しんでるのに、無理して証言に出てきたんだ…それを…くそぉっ!」        一気にグラスを空ける剛。        そしてグラスの割れる音に、オミが一瞬ギュッと目を閉じる。が、開けたときには、剛が        テーブルに俯せて眠っていた。     オミ「え?」      緑「パパっ、こんなとこで眠っちゃ駄目!」        剛を揺する緑。      緑「んもうっ、パパったらこんなに大きい体で子供なんだから」        それを見て微笑むオミ。      緑「今日は、ホントごめんなさい」     オミ「え?」      緑「こんなとこまで付き合わせちゃって。迷惑だったでしょ?」     オミ「そんなことないよ」      緑「え、ホント?じゃ、今度また付き合ってもらえます?」     オミ「え?また裁判っ?」      緑「遊園地っ」        笑う2人の間で寝言を言っている剛。      剛「弁護士野郎…」
子猫の住む家(居間)        パソコンの前にオミ。後ろからケンが声を掛ける。     ケン「おうオミ。こんな時間まで勉強か?」     オミ「んー…」     ケン「ん?弁護士?」        モニターを覗き込むケン。     ケン「なんだよお前、法学部でも受けるつもりか?」        画面には鬼怒川のデータが次々と映し出される。     オミ「いや。…あっ!」     オミ[あの犯人も、鬼怒川弁護士が無罪に…]
エレベーター        階数表示の横には、テナントの名前が並んでいる。        その中に、鬼怒川弁護士事務所の名前もある。        エレベーターに乗っているのはオミ。
鬼怒川弁護士事務所(受付)        エレベーターを降りると、オミは目の前の受付に足を向けた。     オミ「あの」    受付嬢「はい」     オミ「鬼怒川弁護士に会いたいんですけど」    受付嬢「お約束はございますでしょうか」     オミ「いえ」        すると、オミに一枚の用紙を差し出した。    受付嬢「ではこちらに、ご用件、またはご相談内容をご記入下さいませ」        受け取り、用紙を見つめるオミ。     オミ「はぁ」        仕方なくそれを持って受付を離れる。が、隅の方に資料室と書かれた部屋を見つけた。        オミは周りを見回すと、素早くその部屋へ入って行った。
鬼怒川弁護士事務所(資料室)        暗い部屋で、次々と資料を出しては、開くオミ。        が、誰もいないはずの部屋で、後ろから声がした。    鬼怒川「探し物かい?」        慌てて振り向くオミ。    鬼怒川「ほう…君は確か…」        彼が言い終わらないうちに、ドアを破って、男が2人現れた。        そのうちの1人がオミ目掛けて襲いかかってきた。        棒のようなもので突いてくる男、よけるオミ。        そして、男のスキを見て足を掛ける。        床に倒れる男。        そこへもう1人の男が出てこようとしたところで、鬼怒川が再び姿を見せた。    鬼怒川「ストップ!どうやらこの少年は、見かけよりもずっと危険なようだ」        鬼怒川がオミの前に立つと、2人の男は一礼して去っていった。    鬼怒川「私は暴力が嫌いでねぇ。どんな問題も話し合えば解決できる。来たまえ」

アイキャッチ:オミ CM アイキャッチ:オミ

ビル屋上
       ドーム状のガラス張りの空間。        中央には橋のように、ガラスの道が出来ている。        その中ほどに鬼怒川。オミは入口に立っている。    鬼怒川「さあ、こっちだ。遠慮することはない。ここは私のプライベートエリアだよ。どうした?        怖いのか?」        怯えながらも、足を踏みだすオミ。        目の前まで来ると、鬼怒川は上を見上げた。    鬼怒川「見たまえ」        オミも上を向いた。        ガラスが太陽に反射して、眩しさで目を細めるオミ。    鬼怒川「夜になれば星も見える。まさに天にも昇る心地だよ。…しかし!」        今度は足元に視線を移す。        オミも下を向くが、目が回るような、吸い込まれるような感覚に陥り、倒れそうになる。        慌ててオミを支える鬼怒川。    鬼怒川「おっと。気を抜けば、あっという間に奈落の底というわけだ」        オミの肩に手を乗せる。    鬼怒川「私はね、自信をなくしたり、迷ったりしたときは、いつもここに立って自分を戒めるんだ」     オミ「あなたは、裁判で負けたことがないんでしょう?自信をなくすなんてことが、あるんです        か?」        一歩下がり、鬼怒川から離れるオミ。    鬼怒川「あるさ、人間だからね」        それから一瞬、強い目でオミを見た。    鬼怒川「オミくん、といったね」     オミ「はい」    鬼怒川「君はその若さで、何度となく人の死を乗り越えてきた。そうだね」     オミ「ど…どうして…」    鬼怒川「はっはっは。私は仕事柄、人を見る目には自信があるんだ。ここへ来たのは、私に何か疑い        を持ったからだろう?だったら直接聞いてくれ。何でも答えるよ」     オミ「あなたは…証人を追いつめ、死なせるようなことをしています。どうしてですかっ?」    鬼怒川「どうして?いけないことかね?」     オミ「だって…」    鬼怒川「私は弁護士として、精一杯仕事をしているだけだよ。弁護士は持てる力を最大限に使い、あ        りとあらゆる方法で戦うべきだ。もちろん検事も全力を尽くす。双方がそうやって精一杯努        力することによって、初めて真実らしきものが見えてくるんだ」     オミ「でも…その結果、殺人鬼が野放しになってもいいんですか?」    鬼怒川「我々は神じゃない。人間を裁くいうのは難しい事なんだ。あんな奴は殺してしまえというの        は簡単だが、その人間が生きる価値さえないと、誰が決められるんだ?」     オミ「そんな…」        オミの声がだんだん小さくなっていく。    鬼怒川「仮に被告人が、本当に凶悪な殺人鬼だったとしても、そうなるまでには様々な事情があった        はずだ。どんな悪党も同じ人間だよ、生まれつきの悪人なんていない。だからこそ、裁判で        出来る限りの審議を尽くす必要があるんだ」     オミ「それは…」    鬼怒川「なるほど、その結果が常に正しいとは限らない。しかし私は、これが最善の方法だと信じる。        それとも君は、悪いと決めつけた相手は有無も言わさず殺してしまえと、そう思うのかい?」     オミ「…僕は…」
鬼怒川弁護士事務所        夜、誰もいない事務所に電話が鳴る。        鬼怒川がデスクでイスに座ったまま、誰かから携帯を受け取る。    鬼怒川「鬼怒川です」
山頂の屋敷        老人が3人、並んでテラスに座っている。    老人C「いかがですか。お仕事は順調に進んでいますか?」 鬼怒川(電話)「はい、近々また1人、どうしようもない邪悪な殺人鬼を世に放ってやる予定です」    老女B「ほっほっほ、邪悪さこそ、人間の本性ですからねぇ」    老人A「さよう。自然な人間を塀の中に閉じ込めていては、来るべき新しい世界は
鬼怒川弁護士事務所 老人A(電話) 開けませんよ」    鬼怒川「分かっております。え、シュヴァルツですか?」        横にはクロフォードが立っている。    鬼怒川「ご心配はいりません。万一裁判沙汰になるような事態が起こっても、私が必ず無罪にして        やりますよ。…はい、こちらこそ。失礼致します」        電話を切ると、その携帯をクロフォードに投げた。        クロフォードは、それを内ポケットにしまいながら クロフォード「たいした自信だね。この前も証人を殺したそうだね」    鬼怒川「人聞きの悪いことは言わないでほしいな。あの証人は偽証していたんだ。その罪悪感に耐え        かねて、心臓麻痺になったんだよ」 クロフォード「なるほど。しかし凶器のゴルフクラブには、被告人の指紋がついているそうじゃないか」        その時、ドアをノックする音がした。        ドアが開き、2人の男がゴルフクラブを持って入ってくる。    鬼怒川「ああ、ご苦労」        立ち上がり、それを受け取る鬼怒川。 クロフォード「それは…」    鬼怒川「ゴルフが趣味でねぇ」        鬼怒川はニヤリと笑うと、その場で素振りをして見せた。
テレビ画面        テレビには、無罪という紙を掲げた男が映っている。 アナウンサー「昨年起きた、連続通り魔殺人事件の裁判ですが、検察側は大久保義信被告に対する起訴を取        り下げました。先日の、証人の急死に続き、凶器とされていた証拠品が紛失するという異例        の事態で、これ以上公判は維持できないと判断した為です」        鬼怒川が記者達にマイクを向けられて、囲まれている映像。    鬼怒川「まったく馬鹿げた裁判でした。証人も証拠もでっちあげだったんです。これは憲法で保障さ        れた、基本的人権に対する、重大な侵害です」
子猫の住む家(店内)        閉店でシャッターを降ろしているアヤ。        イスに座っているオミと同じく新聞を読んでいるケン。        手にしている新聞には、鬼怒川の裁判についての記事が載っている。     ケン「何だか妙な話だな」     オミ「人を裁くのは難しい事なんだ…」        ぼそっと、独り言のように呟くオミに、ケンが顔を上げる。     ケン「え?」     オミ「僕達、ターゲットの事を良く知りもしないで、ミッションを遂行しているけど、ホントに、        それでいいのかな」        閉店作業をしていたアヤが振り向いてオミを見る。     オミ「相手だって人間だ。家族もいるだろうし、悪事に走ったのには、それなりに理由があると思        うんだ」     アヤ「くだらない感傷だな」     オミ「どうして!大事なことだと思うんだ。だって、僕達人の命を…」     アヤ「そうだ。オレ達は人殺しだ」        はっとするオミ。     アヤ「そんなことは分かってるハズだぞ、オミ。ヴァイスになった時からな」     オミ「だけど…」     アヤ「オレ達は、法で裁けない黒き獣を倒す。そのためには、法律も破る。殺人という罪も犯す。        それだけのことだ。ターゲットの事をあれこれ考える必要はない」        アヤに続くように、部屋側のドアが開いてヨージが店に入ってきた。    ヨージ「そうだ。オレ達は正義の味方じゃない。もちろんこんなことをやっている以上、いずれ、        オレ達も裁かれる日が来るだろうな…だが」     ケン「オレ達がやらなきゃ、誰かが泣く事になる。弱き者達が。オレ達は、必要悪なんだ」
事務所近くの路地        夜の暗い道を、酔った剛を支えながら歩く緑。      剛「くそっ!釈放だとっ?ふざけるな!」        よろける剛。      緑「パパ」      剛「オレが、オレが、やっとのことで捕まえたのに。あの悪党!」      緑「…あら?」        路地脇に立ち並ぶ木々。その木の陰に、緑は人影を見つけた。      剛「ん?」        人影が、2人に姿を見せた。釈放された大久保だ。        手にはゴルフクラブを持っている。      剛「おまえ…!」        大久保はにやりと笑った。                  救急車と、その周りには凄い人だかり。        そこに駆けつけるオミ。        人垣の間から、担架で運ばれる緑の姿を見つけた。     オミ「葉月さんっ!」        そして、担架にも乗せられていない剛には、そのまま布が掛けられた。     オミ「おじさんっ!」        歯を食いしばり、涙を堪えるオミ。   バーマン「オミ」        顔を上げるオミ。そこにはバーマンの姿があった。   バーマン「ミッションよ」
子猫の住む家(地下)        ソファに座り、ビデオを見ている5人。   ペルシャ「ヴァイスの諸君。今回のターゲットは、弁護士鬼怒川とその助手達、及び殺人犯大久保義信        だ。闇の白き狩人達よ、この黒き獣の明日を狩れ」   バーマン「全員参加でいいわね」     アヤ「オミ、迷いがあるなら降りろ」     オミ「僕も、参加する!」
鬼怒川弁護士事務所        2人の男が、ぐにゃぐにゃに曲がったゴルフクラブを鬼怒川に渡す。    鬼怒川「やれやれ、釈放されたその日に同じ手口で殺すとは。しょうがない奴だな」        部屋の隅には、大久保が膝を抱えて笑っている。    鬼怒川「娘は生きているそうだぞ。どうせならきっちり殺してこい」    大久保「きっちり殺す」    鬼怒川「フッ、まぁいい」        持っていたクラブを大久保に投げる。    鬼怒川「また裁判になり。その娘が証言台に出てきても、この前の女と同じ目にあうだけだ。        私が弁護する限り、有罪になることは有り得ない」        と、突然電気が消えた。    鬼怒川「何だ!」        暗闇にヨージのワイヤーが光る。ワイヤーは男の首を取り、天井に吊上げた。        少しもがいたが、男はすぐにぐったりして、宙吊りのまま息絶えた。        もう1人の男はケンを見つけ、襲いかかろうとしたが、バグナグの前に散った。        慌てて逃げる鬼怒川。        大久保はむやみにクラブを振り回していたが、アヤの刀に倒れた。
ビル屋上        必死で走る鬼怒川の腕に、1本の矢が刺さった。    鬼怒川「だ、誰だっ」        鬼怒川が振り返ると、ボーガンを持ったオミが立っていた。    鬼怒川「き、君は!」        ゆっくりと近付いてくるオミ。    鬼怒川「よ、よせっ!暴力では何も解決できないぞ。私の目を見ろっ!」        素直に見てしまうオミ。    鬼怒川「そうだ。オミくん、話し合おう」        その時、鬼怒川の目が違う光りを放ったように見えた。        同時にオミの目は、虚ろになっていく。     オミ「…話し合う…」        頷く鬼怒川。    鬼怒川「私は法律を破った覚えはない。いや、仮に私が罪を犯したとしても、裁判で争えばいい事だ」        オミはぎゅっと目を閉じて、それから大きく見開いた。     オミ「鬼怒川さん!あなたのような法で裁けない悪を倒すのが、僕達ヴァイスの役目です!」        鬼怒川の表情が歪む。     オミ「僕は、人殺しなんですっ」    鬼怒川「フッフッフ、人殺しか。だったら私を殺さない方がいい。いずれ私の力が役立つ時が来る。        いつでも無罪にしてやるぞ、オミくん」        黙ってボーガンを構えるオミ。        それから、小さく呟いた。     オミ「これが、ヴァイスの裁きです」        矢が放たれ、鬼怒川を射る。        鬼怒川は、ガラスの橋の下へと落ちてく。        オミは彼が落ちていった足元の暗闇を、じっと見ていた。
病室        ベッドに横たわっていた緑が、ゆっくりと瞼を開いた。        横を向くと、窓辺には可愛い花が飾られている。        そして窓の下には、1人で帰っていくオミの後ろ姿があった。