古びた建物
    明日香「ヨージ、ヨージっ!」

建物内(ヨージの部屋)         ドアを開け放した出入口で、大声を出す明日香。     明日香「まぁだ寝てたのか?さっさと着替えてこっちに来いよ」         窓際のベッドで裸のまま、俯せで枕を抱き眠っているヨージ。         窓から吹く風で、カーテンが揺れている。     明日香「うぉっ、どうだこの天気。今日は遠くの船もよーく見えるぜ」     ヨージ「…わーかった、今起きる…」         うっすらと瞼を開くと、目の前に立っている明日香が、ノイに変わった。         素早く枕で防御するヨージ。         枕が引き裂かれ、中の羽が飛び散る……。
子猫の住む家(ヨージの部屋)         ベッドから飛び起きるヨージ。         酷くうなされたのか、汗だくで、肩で息をしている。           電柱で鳴く数羽のカラス。         窓枠に凭れ、それをぼんやり見上げているヨージ。         煙草をくわえたま、ボソッと呟く。     ヨージ「休みの日ぐらい眠らせてくれよ、明日香…」


Mission 21 Trane ―思い出の中でb


地下研究室         薄暗い部屋で眠る彩。                  同じ地下室と思われるところに、鉄製の水槽のようなものがある。         中には緑色の液体に浮かぶ、雅史がいる。         ガラス越しに、うさぎのぬいぐるみを抱いたトート。     トート「パパぁ、早く元気になって。またトートと遊んで欲しいの」         そう言って、ガラスにぬいぐるみを押し付ける。         後ろでそれを見ているシェーンとヘル。    シェーン「いつになったら雅史は…」      ヘル「ヴァイスのせいよ」         一人ナイフを眺めているノイ。      ノイ「殺す」         呟いて、ナイフを投げる。         それはドアに刺さり、そのドアが開くと、シュルディッヒが顔を出した。     シュル「でっかいモルモットの処分を頼むぜ」    シェーン「ふざけないでよ!」     シュル「クンダリニーを覚醒させる研究は、雅史にも応用できるんだけどなぁ」         黙っているシュライエント。     シュル「オレは、好意でお前さんらにわざわざ仕事を頼んでるんだぜ」         言い残して出ていくシュルディッヒ。    シェーン「ちっ」     トート「いつまでこんなことしてなくちゃいけないの?」      ヘル「もう少しよ、もう少し…」
駅のホーム         終電と思われる、誰もいないホームに人が走り抜ける。                  車内点検をしていた駅員が悲鳴を上げた。         そこには、背中を一直線に切り裂かれた男が、倒れていた。
公園         脇道に止まっている車に、駆け寄る男。       男「お待たせ…うわぁぁっ!」         男は慌ててもと来た道を逃げて行った。         それを見ている、シェーンと思われる女の足。         車のシートには、背中を切り裂かれた女が死んでいた。
子猫の住む家(地下室)    ペルシャ「ヴァイスの諸君、またも猟奇的事件が多発している」         画面には被害者の写真が映し出されている。      オミ「なぁに?あの傷」    ペルシャ「いずれの死体も、背骨が抜かれていた」      ケン「あー?魚じゃねぇんだぜ」    ペルシャ「闇の白き狩人達よ、人間をモルモットのように扱う、悪魔の研究所を壊滅せよ」         ビデオが終わり、部屋の電気が点く。     ヨージ「あー、しっかし、手掛りのないミッションだこと」    バーマン「クンダリニって知ってる?」      ケン「くんだりにー?」      オミ「確かヨガの思想のひとつじゃ…」      ケン「おおっ」    バーマン「背骨の最も角に眠っている潜在的精神エネルギー…そう言われているわ。そこを覚醒させる         と膨大なエネルギーが噴出すると、ヨガでは教えているの」     ヨージ「で?それと、その背骨のない死体が、どう関係してくるんだ?」    バーマン「クンダリニーを科学的に悪用しようとする、危険な連中がいるのよ。あの変な死体は…」      アヤ「モルモット。だろ?」      ケン「なんてひでぇことを…」         アヤの目の前に書類を突き出すバーマン。    バーマン「これがクンダリニーの研究所のリストよ。この中に、必ず悪魔の研究所があるはず」         受け取り、リストを見ているアヤ。         ぼーっと遠くを見ているヨージ。    バーマン「それと、もうひとつ情報があるの」         少し離れて、全員に向かって話し始める。    バーマン「クリティカァによると、変死体が発見された現場で、必ず4人の女性が目撃されているの」         ヨージの表情が動く。      ケン「え?4人の女性?もしかしたら…」    バーマン「目撃されている特徴から判断すると、シュライエントの可能性が高いわね」     ヨージ[シュライエント?]         明日香とノイがダブって脳裏に浮かんでくる。     ヨージ[明日香!]
シュライエントのアジト(廊下)         暗い廊下に、アヤとオミ。         部屋を覗いて首を振るアヤ。
アジト(書斎)         ケンがパソコンのデータを見ている。         傍らで一緒にモニターを見ているヨージ。     ヨージ「どうだ」      ケン「う〜ん…」
アジト(書斎の向かい側の部屋)         向かい側の窓から見える、ヨージとケンの影。 ヨージ(声のみ)「こんなことなら、もう少し科学を勉強しておけばよかったぜ」  ケン(声のみ)「ま、一緒にコピーとっとくか」         その窓のカーテンが、音を立ててはためいた。
アジト(書斎)         素早く気配に気付き、ヨージが振り向くと、正面からムチが飛んできた。         二人がよけると、ムチはパソコンに命中し、破壊された。         ケンの後ろの本棚に、手裏剣のようにナイフが刺さる。         同時に何者かがケンに襲い掛かる。ノイだ。      ケン「シュライエントかっ」         振り返るヨージ。
アジト(廊下)         階段を昇るオミの足。         ガラスの割れる音に足が止まる。         振り返り、階段を駆け降りるアヤとオミ。
アジト(中庭)         窓を割って転がるように中庭に出てくるケン。      ケン「あっ、ヨージは…」         部屋の方を振り返ろうとしたケンの前に、トートが現れる。         パラソルの先で笑いながら突いてきた。     トート「きゃははっ。待て待てーっ」         部屋の中には、ヨージとノイの姿が見える。
アジト(書斎)     ヨージ「やめろっ」         ノイの攻撃をよけるだけで、反撃しないヨージ。     ヨージ「明日香…おまえ、明日香なんだろっ」      ノイ「貴様に名乗る必要などない」         ヨージは一瞬の隙を突かれ、床に腰を打った。         そこへシェーンのムチが飛ぶ。      シェーン「ヨージさんっ、次は私のお相手も、して下さらないっ?」         傍にあったイスを盾に、ムチを交わすヨージ。         それを見ているノイ。     ヨージ「明日香!分かんないのか?オレだ、ヨージだ!」         手を止めるシェーン。    シェーン「ちょっとぉ、さっきから何処見てんのよー」         ヨージは立ち上がり、ノイの方へ向くが、彼女は容赦なく攻撃してくる。         ノイの膝が、もろに腹に入った。         殴られ続けるヨージ、それを見て高笑いするシェーン。その隣にはヘル。      ヘル「まだよ。攻め抜いて、いたぶりつくしてから、殺してやるわ」         憎しみに歪む表情。      ヘル「この世に生まれたことを、後悔するくらいにね」         ノイの攻撃は止まない。         ヨージの体には傷が増えていく。         ふいに、明日香の声が聞こえた気がした。     明日香「ヨージーっ!」         ノイが、ひときわ力を込めて手を振り上げた時、ヨージがその手を掴んだ。         そのまま後ろから羽交い締めにする形で、ノイの動きを封じる。      ノイ「ぐっ…放せ…っ」     ヨージ「ダメだ」      ノイ「放せっ」     ヨージ「離さない」         ノイの肩に顔を寄せるヨージ。一瞬、ノイの動きが止まる。         ムチを握りながら、苛々しているシェーン。    シェーン「んーっ、ノイ!何をやっているのっ?」         と、シェーンの脇の窓から、ケンが飛び込んで来た。      ケン「お前の相手はこのオレだぁっ!」           ドアから駆け込んでくるアヤ。      アヤ「シュライエント!」         窓から逃げるヘル。それを追うアヤ。      アヤ「待てっ!」         庭を走っていたアヤを目掛けて、ピンクの車が走って来た。         運転しているのはトート。           ようやくヨージの腕を振り切って、逃げるノイ。         腕をやられ、崩れ落ちるヨージにケンが駆け寄る。      ケン「ヨージっ」           運転席に乗り込むヘル。      ヘル「轢き殺してやるわ」         トートは後部座席に移り、助手席にはシェーン。         が、車が走りだしたところで、オミのボーガンが屋根から貫通し、バランスを崩した車は         狙っていたアヤとは逆の、ノイのいる方へ角度を変えた。         車はノイを跳ね、そのまま逃走した。         ケンに肩を借りていたヨージは、それを見ていた。     ヨージ「明日香ぁぁっ!」
車内    シェーン「明日香明日香って、あの男もバカな奴よね」     トート「でも、なんかステキ」         回想   (9話の屋敷)              炎に包まれている雅史の屋敷。              壁の下敷きになっているトートの目の前に、誰かの足が歩み寄ってきた。              見上げると、那岐が立っている。           那岐「助けてあげる」              気を送り、トートの上の壁を砕く那岐。     トート「助けてあげる、か。ふふふっ」         嬉しそうに、うさぎのぬいぐるみを抱きしめるトート。
子猫の住む家(ヨージの部屋)         ドアをノックする音。      ケン「ヨージー、入るぜ」         開けてぎくっとするケン。         中では、ヨージがノイを着替えさせている。     ヨージ「何だ?」         慌ててドアを閉め、外に出るケン。         手摺りを掴んではぁはぁいっていると、オミが紙袋を抱えて歩いてきた。      オミ「ケンくん?」         少し眺めているオミ。      オミ「へーんなの」         オミがヨージの部屋の前に立つと、ケンが慌てて立ち塞がろうとする。      ケン「あちゃちゃちゃちゃちゃっ!ダメダメダメダメっ!今開けっ、開けちゃダメっ!入った…」         と、暴れているところで、ヨージが中から顔を出した。     ヨージ「見たな」      オミ「あの…お医者さん、何て?」         ドアを開けたまま、部屋に戻りながら答えるヨージ。     ヨージ「かなりの打撲…でも、骨に異常はなかったとさ」         ノイの横たわるベッドに腰かけ、寝顔を見つめるヨージ。      オミ「そう。…じゃあこれ、ここ置いとくから」         紙袋を近くに置くオミ。     ヨージ「オミっ」      オミ「ん?」     ヨージ「サンキュ、いろいろ」           明かりを消した部屋。          窓から月を見上げるヨージ。  ケン(声のみ)「ズリぃよなぁ、あいつも」  オミ(声のみ)「ケンくん来てっ」  ケン(声のみ)「あ?」         傷だらけのヨージの横顔。  オミ(声のみ)「クンダリニー研究所の洗い出し、手伝って欲しいんだ」  ケン(声のみ)「(溜息)…ОK」         その横顔に、後ろから指が触れた。         振り向くと、ノイが見上げている。      ノイ「私が…やったの?」         思わずノイの肩を揺するヨージ。     ヨージ「明日香!お前、記憶が戻ったのか!」      ノイ「痛いっ」         その手から逃げるように背を向けて、俯くノイ。      ノイ「ごめんなさい、違うの。これ以上思い出そうとすると、頭が…っ」     ヨージ「いいって、いいって。無理すんなよ。少しずつ、思い出していけばいいんだ」      ノイ「ヨージ…」         と、予告もなくドアが開いた。      アヤ「妹の居場所を、知っているな」
オミの部屋         ベッドに体を投げ出すオミ。      オミ「あーあ、ダーメー。それらしいものはひとつもないや」         床やベッドには、資料やディスクが散らばっている。         一人掛けのソファにはケン。      ケン「んー?難しいのか?」      オミ「ううん、量が多すぎるだけ。念の為、バーマンにも調べてもらうことにするよ」      ケン「あの研究所は白か」      オミ「ねぇ、ケンくん。彼女のことどう思う?」      ケン「え?」         ベッドの上に起き上がるオミ。      オミ「ヨージくんには悪いけど、僕には…」      ケン「罠かもしれない、ってことか?」      オミ「うん…」         考え込んだ表情のオミ。      オミ「明日香って女の人、ヨージくんの恋人…だったんでしょ?」      ケン「ああ」      オミ「確か死んだって。それがどうして…」         オミの前にティーカップが差し出される。      ケン「ま、あんまり根詰めんなよ」         自分もマグカップを持って、ベッドに腰掛けるケン。      ケン「雅史に救われて、洗脳された。ってこともある」      オミ「まさか」      ケン「いや、奴ならやりかねない」      オミ「はいはい」         二人がお茶していると、突然大きな物音がした。
ヨージの部屋         ノイの肩を掴み、ガクガク揺さぶるアヤ。      アヤ「妹は何処にいる!」     ヨージ「やめろっ!」         部屋に駆け込んでくるケンとオミ。      ケン「待てよっ」         ヨージを抑えるオミ。      オミ「どうしたのっ?」         オミの腕を掴んだまま、アヤに向かってヨージが言う。     ヨージ「とにかく、しばらくそっとしといてくれ!」         アヤを抑えているケン。     ヨージ「彩ちゃんのことは、オレが聞き出す」      オミ「いいでしょう?アヤくん、それで」             翌朝。      ケン「ヨージーっ」         ドアを開けて、はっとするケン。         中には誰もいない。      ケン「あいつ…一体どういうつもりだ!」
車内         助手席にノイを乗せて、車を走らせるヨージ。

アイキャッチ:なし CM アイキャッチ:ヨージ

老人達の屋敷(中庭)    
        お茶を飲みながら、テーブルを囲む3人の老人。     老人A「やはり、あの彩という少女は特殊な体質でしたな」     老女B「さっそくクロフォードに連絡して、こちらで保護いたしましょう」     老人C「しかし、16歳から少しも歳をとっていないとは、羨ましい」     老人A「これで儀式に必要なモノは揃った」         高らかに笑う3人。
アパレル系のショップ         服を手に試着室に入るノイ。         ヨージに店員が話しかける。      店員「ほーんと、お久しぶりでしたわね」     ヨージ「ま、いろいろあってね」         アクセサリーと一緒にディスプレイしてある、水色のキャップに気付く。     ヨージ「へぇ、あの帽子まだあったのか」      店員「ご覧になります?」     ヨージ「ああ」         回想 明日香「ヨージ!見て見てこの帽子っ」                ディスプレイの前にしゃがんでいる明日香。            ヨージ「ダメダメ。次の仕事が入るまで、我慢我慢」                少し後ろでなだめるように言う。            明日香「次の仕事っていつだよぉ」                ぎくっとするヨージ。            明日香「あーあ、楽じゃないよな探偵ってのもさ」                ヨージを振り返り、笑う明日香。         思い出にふけっているヨージに、後ろから声がかかる。      ノイ「どうかしら、これで」         ヨージが振り返ると、着替えの済んだノイが試着室から出てきた。         昔の活発な明日香とは全く違う服装。      店員「あら?」         店員も手にキャップを持ったまま、ぽかんとする。
車内     ヨージ「あの店、おまえのお気に入りだったんだ」      ノイ「え?」         運転するヨージの横顔を見るノイ。         ヨージは黙っている。      ノイ「そうだったの…」
海辺のレストラン         二人で良く来た、窓から海が望めるレストラン。     ヨージ「さ、何処がいい?」         ノイは店内を見回し、いちばん奥の壁際の席を指した。         無意識に窓際に目をやるヨージ。     ヨージ[明日香は、あの席が好きだった…]        ノイ「ごめんね、ヨージ」     ヨージ「え」         食事をしている二人。      ノイ「あっちの席が、良かったんでしょ。でも…なんだか明るい所が怖くて」         顔を背けるノイ。         彼女の暗い横顔見て、ふと思う。     ヨージ[馬鹿だったな。オレはすっかり、昔に戻ったつもりで…」         軽く、グラスを上げるヨージ。     ヨージ「今日を、記念日にしよう」      ノイ「え?」     ヨージ「新しく生まれ変わった、君とオレとの記念日に」         静かにヨージを見つめるノイ。
子猫の住む家(屋内駐車場)         オミがバイクで帰ってくる。         バイクを止め、ヘルメットを取ると、目の前にケンとアヤがいた。      オミ「ん?」         アヤは腕を組み、ケンはさっぱりダメと言うようなポーズだ。
子猫の住む家(地下室)      オミ「そ、収穫なし」      ケン「リストは全部当たってみたんだがなぁ」         駐車場から部屋に入ってくる二人。      オミ「まさかバーマンの情報が間違っていた、ってこともないだろうしねぇ」      ケン「あぁ…どこかで見落としてるんだ…」         二人の後ろから来るアヤ。      アヤ「ヨージは」         ぎくっとして振り返るケン。      ケン「んっ!あ、いや…独自に調査するって…」      アヤ「ノイも一緒か」      ケン「いや、ノイじゃなくて明日香」      アヤ「どっちでも一緒だ」         ケンに背を向けるアヤ。         奥にヨージが立っているのを見つけ、歩み寄る。      アヤ「彩の居場所は」     ヨージ「まーだ聞ける状態じゃない」      アヤ「だったらオレが聞く!」     ヨージ「んー、どうぞ」         煙草に火を点けるヨージ。     ヨージ「ただし、居場所は教えねぇぜ」         いきなりヨージの胸倉を掴むアヤ。         慌てて駆け寄り、アヤを引剥がすオミ。      オミ「もうっ!二人とも落ち着きなよぉっ!」         ヨージの傍らにケン。      ケン「アヤの気持ちも分かるだろ?何とかしてやれよ」         ケンを突き放すヨージ。     ヨージ「そうは言ってもよ、記憶がないのにせっついたって、どうにもなんねぇだろ。         拷問でもしろってのか?」         遠慮がちな声で問うケン。      ケン「…騙されてるってことは…?」         キッと目を見開いたかと思うと、ヨージは振り返りざまケンを殴り、突然殴られたケンは         尻餅をつくように、床に崩れた。         唖然としているアヤとオミ。
高速道路         夕暮れの高速。車を飛ばすヨージ。         回想  ケン「ヨージ」                ゆっくり立ち上がるケン。             ケン「戻って…来んだろ?」                黙って見つめているアヤとオミ。     ヨージ[すまねぇ。でも、オレが明日香を信じてやらなきゃ、誰が…」
港の倉庫周辺         ヨージと明日香の姿。
子猫の住む家(地下室)     ケン「あいつ、さっきは本気で殴りやがって」        階段の傍で、俯いているケン。        その後ろ姿を見ているオミ。     オミ「本気…そうだよね。ヴァイスとして、ここにいる以上…」        アヤを見るオミ。     アヤ「奴の願いが、昔の恋人を取り戻すことなら、妹を無事に取り戻すことが、オレの願い。        同じことだ」     ケン「ヨージの奴…ノイの記憶が戻っても戻らなくても
港の倉庫周辺        今度のミッションが終わったら、それで…」          立ち止まるヨージ。後ろからノイ。    ヨージ「ここだ」        建物の間の、細い路地。        頭を抱え、震えだすノイ。     ノイ「私…そ、そうよ、確か…」
子猫の住む家(地下室)        夜。        電話が鳴り、オミが受話器を取る。        ソファにはケン。     オミ「あ、ヨージくん?え!研究所が分かったの?」
車内        携帯を片手に運転するヨージ。助手席に、無表情なノイ。    ヨージ「ああ、そこに彩ちゃんもいるそうだ。明日香が話してくれたんだ」
子猫の住む家(地下室)        受話器を取って話すケン。     ケン「ヨージも、やるときはやるじゃないか」        その後ろ、階段から降りてきたアヤは、険しい表情をしている。
シュライエントのアジト内        そのうちの一室に集まる4人。    ヨージ「何とか帳尻は合わせられたぜ」        嬉しそうにヨージの肩を叩くケン。     オミ「でも、ここ最初に調べた所だね」    ヨージ「ああ。地下に、ホントの研究所があるらしい」
地下        地下研究所へ向かって、床下へ降りてくるヨージ。続いてケン。        キョロキョロしていると、後から降りてきたアヤにぶつかった。     ケン「へーぇ…いてっ!」          まだ一人、上に残っているオミ。        なにやら機械をいじっている。     ケン「おいオミっ!早くしろよっ」     オミ「んもうっ!たまには手伝おうって気にはならないのかなっ!」
地下研究室        骨のサンプルがそこここに置いてある。        入ってくるヴァイスの4人。    ヨージ「趣味悪ぃぜ」        しかし、アヤは一人で勝手に前に進む。     アヤ「彩っ、何処だ」        そのとき、頭上から甲高い声がした。    トート「ここにはいないよっ」        見ると、シュライエントの3人が見下ろしている。     ヘル「ようこそ。ヴァイスのお馬鹿さん」    トート「罠にはまっちゃって可哀相」   シェーン「仲間の裏切りにあう気分は、いかがかしら?」     ケン「裏切り?」    トート「よいしょっ」        突然、床が揺れ始めた。     ケン「な、何だっ」     オミ「地震?」        と、オミの足下が突然崩れた。     オミ「うわっ!ああっ!」     ケン「オミ!」        今度は頭上から何かが降ってきた。        オミを助けようと、ケンが飛ぶ。        ヨージもどうにか避けて、無傷だ。    ヨージ「ケン!」     ケン「オレは無事だ!けどオミがっ!」        落ちた床のくぼみにオミとケン。        ケンの傍で足を痛め、苦しそうな表情をしているオミ。        ヨージとアヤ、再び頭上を見上げる。    トート「よそ見してると刺しちゃうぞ、ほらっ!」        上から飛び降りてくる3人。        ふいを突かれ、もろに攻撃を受けるアヤ。    ヨージ「アヤ!」        ヨージがワイヤーを飛ばそうとした瞬間、目の前にノイが立ちはだかった。    ヨージ「明日香」     ノイ「フッ、やめてよ気持ちの悪い」    ヨージ「何っ」     ノイ「みんなお芝居だったの。そんなことも気付かないで」          シェーンに向かっていくアヤ。        が、逆に攻撃を受け、頬にムチを食らう。       ノイ「青臭い思い出にいつまでもしがみついて夢中になって…」    ヨージ「違うお前は…!」     ノイ「いいえ!私はノイ。鷹取雅史の秘書にしてボディーガード」       ケン「ちきしょう、上じゃ一体何が起こってんだ」        ケンの腕に倒れ込むオミ。     ケン「おお、おいっ、オミ!」        抱き起こすと、火照ったような顔をしているオミ。     オミ「ケンくん…ヘンなんだ…」     ケン「お前…」        オミの足を見ると、一部が赤く腫れあがっている。     ケン「どうしたんだ!」   シェーン「あーら、運が悪いわね」        ケンが見上げると、上にはシェーンが立っていた。   シェーン「ここはもともと軍の研究所よ?古くて危険なものがいっぱい残っていても、少しも不思議じゃ        ないでしょ?例えば、体内に入ると短時間で死んじゃうものとか。はっははははっ」        去っていくシェーン。     ケン「アヤ!ヨージっ!」          殴られているアヤ。        ノイと睨み合っているヨージ。        そこにケンの声だけが響いている。 ケン(声のみ)「早く!早く出してくれ!こいつが、オミがっ!」    ヨージ「明日香、もう一度思い出してくれ」     ノイ「ハッ、明日香明日香って情けない男」          ヘルにやられっぱなしのアヤ。       ノイ「明日香明日香ーっ、呼ばれるたんびに吐き気がするわ」    ヨージ「明日香…」          ケンの腕の中で、苦しそうに汗をかいているオミ。       ノイ「みっともない。自分が分かっていないクズ野郎」    ヨージ「違う、お前は明日香だ」          トートのパラソルで突かれるアヤ。       ノイ「志の低い女々しい男。私の愛する雅史とは大違い」    ヨージ「愛する…雅史」        呟くヨージ、襲い掛かるノイ。     ノイ「ただ殺すだけじゃ恨みは晴らせないのよ!いたぶっていたぶって、それから殺してやるつもり        だったのよ!」        仰向けに倒れるヨージ、その上に乗るノイ。     ノイ「無様な男」        悲しげな目でノイを見つめるヨージ。        ノイの背中でワイヤーを握る手。        明日香の思い出が一瞬脳裏を走る。        が、震える手に力を込めると、ノイの首を締め上げた。     ノイ「うぁっ!」        立ち上がると、ノイの体を釣り上げる。        苦しそうに、声を漏らすノイ。        ぎゅっと瞼を閉じてこらえるヨージ。     ノイ「雅史…愛してる…」        ヨージの中で、何かが切れた。    ヨージ「…うわあぁぁぁっっっ!!」        叫び声をあげ、一気にワイヤーを引く。        そしてヨージは自らの手で、ノイの息の根を止めた。
(ここからラストまで「Beautiful Alone」にのせて場面展開)        一人、車を走らせるヨージ。
アジトを見下ろす森        下には燃える屋敷。        ようやく助かったオミ。傍にケン。後ろにアヤ。        アヤが振り向く。そこにはヨージが背を向け、うずくまっていた。        声を殺し、泣き続けるヨージ。
       海沿いを走る車のシルエット
古い事務所        探偵だった時に使っていた事務所。        夕焼けの赤い光が差し込んでいる。        入り口から中を覗くと、デスクで明日香が微笑んでいる。        が、その幻も、すぐに消えた。
屋上        真っ暗な屋上に腰を下ろしているヨージ。        暗い空に、見るでもなく視線をやっている。    ヨージ「オレは…何なんだ…?」               画面暗転。    ヨージ「何なんだぁぁぁーっ!!」