シュヴァルツの部屋
       那岐のアップ
   シュル「何?エスツェット本部が藤宮彩を?」
クロフォード「そうだ。何をグズグズしている、早く連れて来いとな」
   ファル「何故あの娘を?」
クロフォード「16の時から歳をとらないという特異な体質。それをエスツェット本部は儀式に使いたいらしい」
   シュル「藤宮彩はシュライエントが抑えている。すんなり渡すとは思えん」
       かったるそうなシュルディッヒ。
クロフォード「拒んでも構わぬ」
   ファル「オレ達に逆らえば」
       そう言って
       遠くを見つめている那岐。


Mission 22 Miteid ―色あせる時b


子猫の住む家(居間)        パソコンのモニターに映る地図。        そのうちの一画をドラッグし、データを出す。     オミ「ここも違う」        モニターに向かうオミと、少し後ろで壁に寄り掛かりながら見ているケン。     ケン「大変な作業だな」     オミ「このどこかの研究所に、シュライエントのアジトが必ずあるハズなんだ」        もどかしそうに、手のひらに拳を当てるケン。     ケン「くっ!どこに隠れたんだっ」        振り返るオミ。     オミ「そうイライラしないで。クリティカァも懸命に探しているんだ、必ず見つかるよ。…あれ?アヤ        くんは?」
交差点        人ごみの中を歩くアヤ(静止画像) ケン(声のみ)「ちょっと、外の空気を吸ってくるって…さっき出てったよ」        アヤのアップ。悲し気な表情(静止画像) オミ(声のみ)「彩ちゃんのことを考えると、いても立ってもいられないんだろうね」
ヨ−ジの部屋        吸わないまま燃え尽きて、今にも落ちそうな煙草の灰と、だらりとした指。 ケン(声のみ)「ヨ−ジはノイが死んで以来、ずーっと黙り込んでるし…まいったよな」        ベッドに仰向けになり、天井を見上げているヨ−ジ。        明日香のことを思い出している。        と、手にしていた煙草の灰が落ちた。    ヨ−ジ「くっ…!」        顔をしかめるヨ−ジ。
シュライエントのアジト(外)        山の中にヘリがとまっている。        そのすぐ側には、大きな屋敷。彼女達のアジトだ。
アジト(研究室2階)        大掛かりな装置、その中央にある水槽のようなものに、雅史の体が浸かっている。        2階部分のガラスから、シュライエントの3人が、それを見つめている。   シェーン「雅史は、私を救ってくれた大切な人。私がトップモデルから奈落の底に落ちた時、雅史は私を励        ましてくれた。そして、一度死にかけた私を蘇らせてくれた」        シェーンとヘルの後ろには、眠る彩。        そのベッドに、うさぎのぬいぐるみを動かしながら、楽しそうに近付くトート。   シェーン「今度は私が、私が生き返らせてあげる!」     ヘル「そうよ!そうしてまたみんなで、以前のように…」        回想  研究室            トート「はい、あーんしてっ」                モルモットにエサを与えるトート。            トート「いい子ちゃんでしゅねぇー」                それを見ているシェーン。黙々とデータを取っているノイ。                皆白衣を着ている。                顕微鏡を覗いているヘル。                何か微生物が繁殖していくのが見える。             ヘル「あっ…やったわ!細胞がみるみる増殖してるわ。実験は成功ね」                隣で微笑む雅史。                  デスクに座っている雅史を囲む4人。(静止画像)         ヘル(声のみ)「雅史の傍で、私達4人で一緒に過ごした、あの頃に戻りたい…」   シェーン「雅史をこんな目にあわせたばかりじゃない。ヴァイスの奴等はノイを…ノイまでも殺した…        許せないっ、許せない!」        ガラスに手をついたまま、床に崩れるシェーン。        ヘルは肩を震わせたかと思うと、振り向きざま、ベッドに向かってナイフを投げた。        それは枕を切り裂き、当りに羽毛が舞い上がる。    トート「わぁっ!うふふふっ、きれぇーっ」        それを見てはしゃぐトート。     ヘル「こいつは最後の切り札よ」   シェーン「この子を使ってヴァイスを誘き出してやる。死んだノイの仇を、必ず打つ!」        飛び回っていたトートが動きを止め、2人の方を向いた。    トート「え…ノイが?ノイが死んじゃった…ノイが…ノイが…いやぁぁぁっ!そんなのやだぁぁーっ!」        ドアを開け、部屋を飛び出すトート。        そのとき、ちょうど研究室にシュヴァルツが入ってきた。        上から駆け降りてくるトートに気付く那岐。        トートが泣きながら、彼の横を駆け抜ける。        少しの間彼女の後ろ姿を見ていたが、出入口の方を向くと、那岐は後を追うようにゆっくりと        歩き始めた。    シュル「那岐」 クロフォード「放っておけ」        那岐の方を振り向きもせず、2階に向かって声を掛けるクロフォード。 クロフォード「ごきげんいかがですかな。シュライエントのお嬢様方」     ヘル「シュヴァルツ」
たんぽぽ畑        種になり、真っ白になった花畑で、泣いているトート。        うさぎのぬぐるみを動かしながら、1人で喋っている。    トート「どうしたのトートちゃん、何で泣いてるの?」    トート「あのね、ノイが、ノイが死んじゃったのっ。可哀相でしょ、ラメちゃんっ」        再びぬいぐるみを抱き締め、泣き始める。          木の陰から見ている那岐。
アジト(研究室2階)        クロフォードの眼鏡に映るヘルとシェーン。   シェーン「あの子を渡せ?」 クロフォード「報酬は思いのままそうだ」   シェーン「私達は、お金なんかに興味はないわ」     ヘル「この子はヴァイスを倒す最後の切り札。断わる!」    ファル「なにぃ?」        シュヴァルツとシュライエントの間に、緊迫した空気が流れる。
たんぽぽ畑        空へ向けて伸びる手。那岐の手だ。        辺りに風が起こり、たんぽぽ種吸い上げられる。    トート「きゃぁっ」        風が止むと、白い種がふわふわと宙を舞った。     那岐「トート」    トート「那岐くん…」        トートに歩み寄る那岐。     那岐「トート、シュライエントから離れるんだ。ヴァイスは簡単に倒せる相手じゃない。死ぬかもしれ        ないよ」    トート「あいつらがパパをあんな体にしちゃったのよ」     那岐「パパ…鷹取雅史のことか」        目に涙を溜めて話すトート。    トート「ノイを殺したのもヴァイス…ノイを生き返らせることができる?!」     那岐「僕の力では、無理だよ」    トート「だったら放っといて!」        走って行ってしまうトート。        残された那岐、俯きながら呟く。     那岐「そんなこと…いくら僕でも死んじゃうよ」
アジト(地下研究室)        シュライエントに向かって、攻撃の構えを見せるファルファレロ。    ファル「娘を渡せ」        負けじと武器を手にするシュライエントの2人。 クロフォード「やめろファルファレロ」    ファル「ん?」 クロフォード「シュライエントは仲間も同然だ。たかが小娘1人の為に、仲間割れはしたくない」        2人の方に歩み寄っていくクロフォード。 クロフォード「ヘル、シェーン、悪かった。これ以上無理強いはしない。お前達の気持ちは良く分かった。アヤ        の妹をおとりにして、ヴァイスを誘い出すがいい。        私達の共通の敵はヴァイスだ。我々も手を貸そう」     ヘル「手を貸す?」 クロフォード「そう。お前達がヴァイスとコンタクトできるよう、はからってやる。ヴァイスとの最後の決戦だ」
子猫の住む家(居間)     ケン「オミ、まだやってんのか?」        後ろから声を掛けるケン。     オミ「うん」        忙しそうにマウスを動かすオミの手。     ケン「少し休んだ方がいいんじゃ…」     オミ「休んでなんかいられないよぉ」     ケン「ま、そうだけどな」     オミ「見てよぉ、大分消去出来たでしょ?」        笑顔で振り向くオミ。     オミ「後13箇所にまで絞り込めたんだ」        と、向い側にあるパソコンに目をやるオミ。     オミ「あ…ケンくん!」     ケン「ん?あっ…!」        モニターには凄い早さで文字(プログラム?)が流れている。     ケン「ペルシャからのメッセージか?」        そして、突然モニターにヘルが現れた。     ヘル「愛しきヴァイスの4人に告ぐ」        続いて、横たわる彩の映像。     ヘル「私達は彼女を保護している。引き取りたければ、今夜12時までに聖夜科学研究所に来い。        来なければ、彼女は永遠にこの世から消えると思え」        映像が消える。     オミ「シュライエント!」     ケン「彩ちゃん…アヤに知らせてくる!」        が、踏み出した足を止めるケン。        アヤが階段のところに立っていたのだ。     ケン「アヤ」     アヤ「この挑戦状、受けて立つ」     ケン「けどっ、下手に動くと危険だ!」        オミもケンの隣に並ぶ。     オミ「罠を仕掛けてるに違いないよぉっ」     アヤ「…たとえ、卑劣な罠が仕掛けられていようと、オレは行く!」
アジト(建物を囲む森)        月に浮かぶ、アヤのシルエット。        ライターに火が点る、煙草に火をつけるヨ−ジ。        バグナグを握るケン。        ボーガンを構えるオミ。          森を走って行く4人。        まず現れたのが、網の目のように木々に張り巡らされたワイヤー。        掛かると爆発するあれだ。    ヨ−ジ「オレがやる。みんな伏せていてくれ」        ヨ−ジがワイヤーを放ち、纏めて引くと、爆発が起き、炎が上がった。
アジト(屋敷の窓から)        森で炎が上がっているのを見ている、ヘルとシェーン。   シェーン「やったわっ」     ヘル「奴等はそんなに容易く倒せやしないわ。警戒を怠らないで」
アジト(建物を囲む森)        今度はかなり高くまで続いているフェンス。        そこにヨ−ジ、アヤ、ケン。        草木を掻き分けて、オミが戻ってくる。     オミ「もう一箇所、裏門があったよ」     アヤ「いずれにしろ罠が仕掛けてあるだろう」     ケン「フェンスを乗り越えるか」     オミ「無理だよ。見て」        オミが木の葉を投る。それがフェンスに当たり、一瞬にして燃え、消えた。     オミ「フェンスには高圧電流が流されているんだ」    ヨ−ジ「ちっ、こうなりゃ中央突破しかねぇな」     オミ「待って、僕に考えがある」          木の上に登って、ボーガンを構えるオミ。        フェンスの向こうの木に撃ったようだ。        その矢に付けたワイヤーを頼りに、滑り降りる4人。

アイキャッチ:なし CM アイキャッチ:アヤ

アジト(モニター室)
       茂みの中から覗くレンズ。        その映像が、屋敷内のモニターに映し出されている。        映っているのはもちろんヴァイス。     ヘル「奴等が研究所に侵入したわ」   シェーン「それでなければ美しい戦いはできない。奴等は私達の手で倒す」     ヘル「トートは?」   シェーン「トートなら…あら?」        振り向く2人。そこにトートの姿はない。     ヘル「この大事な時に」
アジト(庭)        木の陰に隠れながら立っている4人。    ヨ−ジ「監視カメラか」     オミ「あそこにも」     アヤ「これ以上、一緒に行動するのは危険だな」     ケン「まとまって行動したら、一度に4人ともやられる危険がある」     オミ「バラバラになった方が良さそうだね」    ヨ−ジ「オレがおとりになる」        驚いてヨ−ジを見る3人。    ヨ−ジ「オレが派手に暴れまわって敵の注意を引き付ける。その間に、お前ら研究所に忍び込んでくれ」     ケン「バカ言ってんじゃねぇよ!」     オミ「無茶だよ、ヨ−ジくんっ」    ヨ−ジ「なんだと…」        続いて、後ろからアヤ淡々と呟く。     アヤ「お前はノイを殺したことで、冷静さを失っている」        ハッとするヨ−ジ。     アヤ「落ち着け」        そう言うと、ヨ−ジの肩ごしに頷くアヤ。それを合図に散るケンとオミ。        1人立ち尽くすヨ−ジ。    ヨ−ジ「フッ…オレとしたことが」        サングラスを直すと、ヨ−ジもまた研究所へ向かった。          月の周りを黒い雲が行き来している。        嫌な雲行きだ。        カメラを避けながら進んでいくヨ−ジ。     那岐「真面目に僕の話を聞くんだ、トート」        その声に足を止め、振り返るヨ−ジ。茂みの奥に人影を見つける。        那岐とトートだ。     那岐「いいかい。クロフォードは、結局は君達を利用することしか考えてないんだよ。ヴァイスと戦っ        ちゃいけない、危険だよ。君は今のままじゃいけないよ。すぐに、ここから離れるんだ」    トート「うーん…なんで?なんで?なんでそんなに」        顔を近付けてくるトート、赤なる那岐。     那岐「君には、死んで欲しくないんだ」    トート「え?!」     那岐「君には、死んで欲しくないんだ!」        嬉しそうに頬を赤らめるトート。    トート「那岐くん…ありがと」        目を閉じるトート。        那岐はそれに応えようとするが上手く出来ず、ゴツンと音を立ててぶつかった。        口元を押さえるトート、慌てる那岐。     那岐「ごっ、ごめんっ。痛かった?トート」        が、トートは微笑むと、自分から唇を重ねた。        最後かも知れない、静かなキス。        それを、切ない瞳で見つめているヨ−ジ。    トート「でも今はダメ。那岐くん、復讐が終わったら、一緒に暮らそうね」        身を翻し、走り去るトート。     那岐「トート!」        後を追う那岐。        が、屋敷が見えてきた所で、目の前に突然クロフォードが立ち塞がり、ものも言わず那岐の頬に        平手を食らわせた。 クロフォード「余計な真似はするな。シュライエントは今、ヴァイスを倒すことに燃えている。憎しみの気持ち        を削ぐような真似はやめろ」        叩かれ、横を向いたまま呟く那岐。     那岐「でも、僕は…」 クロフォード「黙れ那岐!お前は憎しみを忘れたのかっ」        はっと顔を上げる那岐。 クロフォード「お前は幼い頃から、世間に冷たく扱われた」        回想。幼い那岐が、路上で膝を抱え、うずくまっている。 クロフォード「孤独な生活の中でお前は誓ったハズだ。必ず社会に復讐すると」        那岐の肩に手を置くクロフォード。 クロフォード「そのために我々シュヴァルツが動いて来たはずだ。そうじゃないのか」     那岐「分かってるよクロフォード。僕はどんなことがあろうと、シュヴァルツの一員であることに変わ        りないよ」 クロフォード「だったら目的を遂げるまで、雑念は捨てろ。いいな」        屋敷の方へ去って行くクロフォード。        力なく俯く那岐。     那岐[でもあの子だけは、死なせたくない]
アジト(地下研究室)        人がいないことを確認し、入ってくるアヤ。        部屋の中心にある大掛かりな機械にそっと近付いて行く、そして鉄の水槽を覗くと、中に浮かぶ        雅史を見た。     アヤ「これは…!」        驚くと同時に、頭上に人の気配がし、見上げるアヤ。        2階から見下ろすヘル。     ヘル「驚いたようね。雅史をこんな体にしたのはヴァイス。お前達だ!」     アヤ「妹はどこだ!」     ヘル「会いたいか?お前が心から愛する妹に」     アヤ「何処にいる!」     ヘル「フッフッフ。悶え苦しむがいい。大切な人が無惨な姿になる様を見て、胸を掻きむしるがいい!」        アヤの後ろに控えるシェーンの足が見える。     アヤ「彩は何処だっ!」        叫ぶのを待っていたように、後方からアヤの首にムチが巻き付いた。        力一杯ムチを引くシェーン。そこにトートも出てきた。        苦しむアヤ。     ヘル「簡単には殺さないわ。ゆっくりと、なぶり殺してやる」        その部屋の隅に、もうひとつ、そっと立つ人影があった。        那岐だ。        そっとトートを見つめている。     那岐[ダメだトート、戦っちゃダメだ!]                 今度はヘルが、アヤの顔面にめがけて飛び下りてきた。        ヘルの蹴りをもろに食らうアヤ。        あとはヘルの攻撃を受け続け、抵抗もできないまま、床に倒れた。   シェーン「まだ終わっちゃいないよっ!」        シェーンは倒れているアヤを、首に巻いたムチで引き上げ、無理矢理立たせた。     アヤ「妹は…彩は…何処だ…ぁっ!」     ヘル「そろそろ味わわせてやろうか、愛する者を亡くした悲しみを。お前の目の前で、2階にいる妹を        殺してやる」     アヤ「2階かっ」        その時、シェーンのムチがぷつりと切れた。        ケンが飛び込んで来たのた。   シェーン「お前は!」     ヘル「1人増えたところで袋のネズミよ!」    ヨ−ジ「そいつはどうかな」        慌てて声のする方を向くと、そこにはヨ−ジとオミが立っていた。    ヨ−ジ「これで4対3だ。大人しく彩ちゃんを渡してもらおうか」     ヘル「うっ…」          満月に、黒い雲がかかり始める。        部屋の中では、戦いが繰り広げられている。        そしてそれを見守る那岐。     那岐「トート…」    トート「きゃぁっ!」        トートの武器であるパラソルが、ヨ−ジに弾かれ、手を離れてしまった。        ワイヤーを放とうとしたヨ−ジの前に、突然那岐が飛び出し、突き飛ばすようにトートを庇った。        ヨ−ジも手を止める。        苦しそうに、トートに訴える那岐。     那岐「戦っちゃ…ダメだ…、戦っちゃダメだ!」        2人を見つめるヨ−ジ。    ヨ−ジ「こいつら…」        周りでは、アヤはヘル、ケンはシェーンと戦っていたが、シェーンがふいに2階へ向かった。   シェーン「トート、こうなれば最後の…」        上へ駆け上がり、彩のいる部屋のドアを開ける。
アジト(研究室2階)        だが、そこにはシュヴァルツの3人が立っていた。        彩はシュルディッヒが抱き上げている。 クロフォード「この娘はもらっていく」   シェーン「何っ!」 クロフォード「ヴァイスを誘い出した今、この娘はお前達には用なしのハズだ」   シェーン「返せ!それは最後の切り札だ!盾にすればヴァイスは戦えないはず!」        バカにしたように口の端で笑うクロフォード。 クロフォード「もはやお前達にヴァイスを倒す力はない」        その後ろで剣を舐めているファルファレロ。   シェーン「倒す!ヴァイスを倒し、そして約束通り雅史を元の体に戻してもらう!」 クロフォード「愚かな…雅史が元の体に戻ると、本当に思っていたのか」        ファルファレロは剣を構えると、それを思いきり投げた。
アジト(地下研究室)        剣は2階のガラスを破り、階下の水槽に突き刺さった。        水槽が破壊され、雅史の体が床に投げ出される。     ヘル「雅史!」
アジト(研究室2階)   シェーン「なんてことをっっ!」    シュル「研究データの不足部分は、お前達のおかげで補えた」 クロフォード「つまり、お前達も用なしだ」        クロフォードは銃を取り出し、シェーンの向かって発砲した。        勢いで、シェーンの体はガラスにぶつかり、剣で弱っていたガラスは粉々に崩れた。          階下では、ヘルが雅史を抱き起こし、必死で名前を呼んでいる。     ヘル「雅史、雅史、雅史っ」     シェーン「雅史、ごめんなさい…守って…あげられなくて…」        それを横目に見ながら、シェーンは生き絶えた。
アジト(地下研究室)     ヘル「雅史、死んじゃいやぁ…雅史っ、お願いよ雅史目を開けてっ、雅史っ雅史!」        泣きじゃくるヘルを見ているヴァイス。        そして、トートと那岐。    トート「パパ…シェーン…」        呟きながら2階に目をやったトートは、彩を抱いているシュルディッヒを見つけた。    トート「あっ!ダメっ返して!」        那岐から離れるトート。     那岐「トート!」        階段を駆け上がるトート。    トート「返してぇっ!」    ファル「邪魔だっ」        ファルの投げた剣はトートの胸に刺さった。     那岐[トート…!]        彼女は落下し、床に投げ出された。        那岐は少しの間呆然と見つめていたが、やがてゆっくりと、悲し気な表情で近付いていった。        そして、そっと抱き起こす。     那岐「トート」        腕の中で那岐を見上げるトート。    トート「那岐くん…一緒に、暮らせなかったね…」        そう言って微笑むと、力尽きた。        那岐の瞳が涙で揺れる。     那岐「トート、そんな…死んじゃ…死んじゃ…」        彼女をぎゅっと抱き締める。     那岐「ダメだあぁぁぁぁぁっっっ!!」        那岐とトートの体を光が包み、その叫びは壁を壊し、ガラスを砕き、床を割った。          床から逃げたアヤが、シュヴァルツと彩を見つけた。     アヤ「彩!」        今度は天井が崩れ始める。     アヤ「彩ーっ!」 クロフォード「いかん」        去って行くシュヴァルツ。     アヤ「待てっ!」        しかし追いたくても、床が破壊され、身動きがとれない。       那岐「うわぁぁぁぁっっっ!」        遂に2階も、シェーンの死体と共に崩れ落ちてきた。        それでもヘルは雅史を抱いたまま動かない。     ヘル「愛してるわ、心から…雅史」        2人の上にも、壁や天井が崩れ、落ちて行く。        那岐から発する光がドーム状に広がり、那岐とトートを包み、浮き上がった。     那岐「トート。ごめんよトート、守ってあげられなくて」        目を開けない彼女を見つめる那岐。     那岐「トート…」        そして光の中で、那岐はトートを抱き締め、最後にそっとくちづけた。          光はとうとう屋敷全てを包み込んだ。        そして閃光を放ち、光が稲妻のように空に向かったかと思うと、屋敷は跡形もなく崩壊した。        その上を悠々と飛んで行くヘリ。
ヘリ内        乗っているのはシュヴァルツ。        彩は毛布に包まれ、クロフォードが支えている。 クロフォード「これで邪魔者は全て片付いた。あとはこの娘を本部へ連れて行けば、儀式が始められる」
アジト(跡地)        崩れた材木の間に、トートのうさぎのぬいぐるみがある。        そこに数滴、雨が落ち、やがて本降りになった。        その雨の中、瓦礫を押し上げて、ヨ−ジ・ケン・オミが顔をだす。    ヨ−ジ「あーぶねぇ、あぶねぇ」          雨に打たれながら、空を見上げるアヤ。     ケン「シュライエントの連中、最後まであの男のことを…」     オミ「人を愛するって…」    ヨ−ジ「…悲しいな」        少し離れた所で、膝を付いてしゃがんでいるヨ−ジ。    ヨ−ジ「こいつは、必死にこの子を救おうとした…。        オレがノイを…いや、明日香を救おうとしたように…」        横たわる那岐とトートの手をそっと握らせる。        傍で見ている3人。        立ち上がるヨ−ジ。        そして、ヴァイスの4人は、その屋敷を後にした。          雨は酷くなり、絶え間なく雷が光り、ぬいぐるみを照らしていた。        そしてその中に、たったひとつ、起き上がる陰があった。        ゆっくり立ち上がったその無表情な顔。        それは、トートだった。